図解
※記事などの内容は2015年3月4日掲載時のものです
「女性の活躍推進」を目指す安倍政権は、2020年までに社会の中で指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる目標を掲げる。しかし、地方議会では、都道府県と市区町村を合わせた女性議員の割合が11.6%(13年12月末現在)にとどまる。地域によっては、依然残る「女は家庭」という意識が大きな障壁となっているようだ。
◇議員に産休なし
「あらあ、よく来てくれたわねえ」。2月15日、1歳の長女を抱っこした東京都新宿区議の鈴木ひろみさん(31)=民主=が、地域の老人会が開かれた水稲荷神社(同区西早稲田)の社務所に入ると、高齢者たちの温かい笑顔に包まれた。
日本では、子連れで活動する「ママ議員」は珍しい。地方議員を含め政治家は誰からも雇用されておらず、労働基準法の産休が適用されない。議会が独自に認めない限り、産休を取って出産・子育てはできないのだ。
鈴木さんの場合、議会に出す欠席届の理由として「出産」を認めることを議会運営委員会で確認し、すんなり取得できた。「運用一つで、全ての議会で取れるはず。越えなければいけないのは制度より子育て議員に対する価値観では」と訴える。
総務省によると、13年12月末時点の女性議員は、都道府県議会が8.8%、市区町村議会は11.8%。「女性のくせに出しゃばるな」といった意識が根強い地域もある。
佐賀県議会で唯一の女性、武藤明美さん(67)=共産=は、議員活動について「男女共同参画社会になりつつあるが、それでも家族や周囲の理解がないと難しい」と語る。石川で約四半世紀ぶりに誕生した自民党女性県議、安居知世さん(46)は、支援者の側にも「頼りになるのは男性」との意識を感じることがある。「自民党の地方議員は選挙では『自分党』。地盤がなければなかなか当選できない」と漏らす。
◇多様性を発揮
女性が増えない現状を打破しようと、国会議員も立ち上がった。2月26日、国会議員の候補者に占める女性の割合を20年に30%とすることを目指す超党派の議連が発足。候補者の一定比率を女性に割り振る「クオータ制」の法制化を検討し、地方議会についても女性が活躍できる環境整備を進めることを確認した。
議連幹事長に就いた野田聖子自民党前総務会長は「今の議会は、子どもを産む(意義への)意識がない男性ばかり。女性が増えることで、男性にはない知見、知識が生かされる」と指摘する。
女性が増えると、何が変わるのか。神奈川県大磯町はもともと、食の安全や環境保全への関心が高く、市民活動から町議に転身する女性が相次いだ。現在は定数14に対し、1人欠員で女性が8人のため、女性比率は61.5%と全国トップだ。
大磯町議会は開かれた議会を目指し、09年以降、福祉やボランティアの団体など幅広い町民の意見を聴く「一般会議」を開催。昨年の12月議会では、省エネルギー・再生可能エネルギーの利用推進条例を議員提案し、全会一致で可決した。
前議長の渡辺順子さん(68)=無所属=は「『女性は真面目でしがらみがない』と期待してくれる町民が多いのでは。男性とも協力し、今後も議会改革に取り組みたい」と語る。
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