図解
※記事などの内容は2019年6月10日掲載時のものです
安倍晋三首相が夏の参院選に合わせた衆参同日選を見送る方針を固めた。首相は2021年9月の自らの自民党総裁任期満了までに、なお衆院解散・総選挙を仕掛ける構えだが、今後は消費税率10%への引き上げや東京五輪・パラリンピック開催などの重要日程が控える。首相の解散の選択肢は限られてくる。
首相が同日選を検討した大きな理由は、65議席を獲得して大勝した13年参院選の当選組が改選を迎え、議席減が予想されたためだ。同日選で組織をフル稼働させれば減少幅を圧縮できると見ていた。
こうした中、自民党が極秘に実施した参院選の情勢調査では、勝敗を左右する改選数1の1人区32のうち、厳しいのは数選挙区にとどまったという。内閣支持率は堅調で「参院選単独でも政権運営の求心力を確保できる」(首相周辺)と判断したようだ。
とはいえ、首相の残りの党総裁任期を考えると今後の解散のタイミングは多くない。大きく見ると、(1)年内(2)20年(3)21年の三つに分けられるが、いずれもリスクが付きまとう。
年内を眺めると、10月1日に消費税増税、同22日に天皇陛下の即位を内外に示す国事行為「即位礼正殿の儀」と続く。
消費税増税の際には、公明党が強く推した軽減税率も併せて導入される。複雑な制度による混乱から消費者の不満が高まることも予想され、公明党内では「批判がうちに向く恐れがある。しばらく解散は勘弁してほしい」(関係者)との声も漏れる。
年が明けても増税の反動減で景気が落ち込むなどの状況に至れば、20年1月の通常国会の冒頭解散も難しい判断となる。同年7~9月は東京五輪・パラリンピックが開催されており、解散をぶつけにくい。
21年になると、首相の党総裁任期(9月)、衆院議員の任期満了(10月)まで既に1年を切っている状態。選択肢が狭まり、「追い込まれ解散」の色彩が濃くなる。不確定要素が多くなり、内閣支持率が落ち込めば自民党内から首相交代論が出てくる可能性もある。
衆院選準備が遅れていた野党内では安堵(あんど)の声が上がる。立憲民主党関係者は「ラッキーだ」と話した。ただ、立憲の枝野幸男代表はツイッターに「86年の同日選は『死んだふり解散』でした」と投稿。なお警戒を解いていない。
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