図解
※記事などの内容は2018年8月21日掲載時のものです
【バグダッド時事】米国が核合意離脱に伴い制裁を7日に再発動したイランをめぐり、隣国イラクが対応に苦慮している。イスラム教シーア派が主導するイラクのアバディ政権は、シーア派大国イランと緊密な関係だったが、アバディ首相はこれまで巨額の復興支援を拠出してきた米国に配慮して対イラン制裁を順守する意向を表明。反発するイランと溝が深まれば、中東の勢力図にも影響を及ぼしかねない。
イラクは1980年代、スンニ派のフセイン大統領(当時)の下でイランと戦火を交えた。2003年のイラク戦争でフセイン政権が崩壊し、シーア派主導政権に代わると両国は急速に接近。イラクにとって、今やイランはトルコ、中国などと並ぶ主要貿易相手国だ。イラク国内には食品や建築材、自動車など安価なイラン製品が大量に出回り、苦境が続くイラク経済を支える柱の一つとなっている。
イラクで支配地域を広げたスンニ派の過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦では、イランが支援するシーア派民兵がイラク正規軍と共に活躍した。昨年には、独立の是非を問う住民投票でイラク中央政府と対立したイラク北部クルド自治政府の実効支配地域への進攻でも共闘。軍事面でもイランの影響力は増している。
それだけに、イラン側は不満を募らせている。アバディ首相は「制裁は戦略的な誤りであり、支持はしないが従う」と強調したものの、8月中旬に予定したイラン訪問を急きょ中止。AFP通信は関係筋の話として、イランは当初訪問に同意していたが、アバディ氏の発言で態度を硬化させ、方針転換したと報じている。
報道によると、イラン最高指導者ハメネイ師の代理人は「イラクを守るために血を流したイラン殉教者に対する義理を欠いた態度だ。(アバディ氏は)米国を前に心理的な敗北を喫した」と批判。良好だった関係にきしみが生じている。
新着
会員限定