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※記事などの内容は2018年10月24日掲載時のものです
【ジャカルタ時事】インドネシア中スラウェシ州を襲った大地震で、大きな被害をもたらした地滑りと津波は、主として液状化現象に起因していたことが、国際協力機構(JICA)の現地調査で分かった。調査団は「世界で類を見ない震災だが、日本でも十分起こり得る」と指摘している。
中スラウェシ州パル市などの沿岸に地震の数分後、津波が襲来。内陸の住宅地では50~200ヘクタールの広範囲で地滑りが起きた。2113人が死亡し、1300人以上が行方不明となったが、調査団は「犠牲の大部分は液状化に起因する」と分析した。
今回の地震で生じた地滑りは被害の激しさから「陸の津波」とも称される。JICAの防災専門家多田直人さんによると、被災地では傾斜地にあった複数の住宅地で地滑りが発生し、1000単位の家屋が押し流された。375メートル流された建物も確認された。
地滑りは、地表から浅い場所を流れていた地下水が地震後に砂を伴って地上に噴出する「液状化」が原因。東日本大震災でも生じたが、今回は水圧が弱まらずに噴出し続けた点が特異だった。地中の水が次々と浅い地下水に流れ込んだとみられ、大規模な地滑りに発展した。多田さんは「液状化で大勢が死亡する被害は想定されていなかった」と話した。
一方、港湾空港技術研究所の佐々真志さんは、パル湾で発生した津波も液状化によって引き起こされたと結論付けた。陸地が海中に滑り落ちた力によって湾内の海面が押し上げられた可能性が高く、少なくとも沿岸部5カ所で、裏付けとなる痕跡を複数確認。川の河口で長さ2.5キロ、幅200メートルにわたって陸地が崩落していた場所もあった。
日本で多い海溝型とは異なる津波のメカニズムだが、「津波は数分後に来た」「押し波が先だった」との被災住民の証言と矛盾せず、2010年のハイチ地震で先例がある。佐々さんは「パル市のような扇状地や、浅い部分を地下水が流れる土地ではどこでも起き得る」と指摘。日本でも警戒が必要だとの認識を示した。
調査団は専門家26人で構成され、17~19日に現地を訪れた。
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