図解
※記事などの内容は2018年12月31日掲載時のものです
【フランクフルト時事】欧州単一通貨「ユーロ」は2019年1月1日で誕生から20周年となる。国家を超えた通貨統合という史上初の試みには当初懐疑論も根強く、ギリシャを発端とする債務危機にも見舞われた。しかし、巨大経済圏に発展したユーロ圏を背景に、国際金融市場では基軸通貨の米ドルに次ぐ「第2通貨」としての地位を確保。欧州連合(EU)当局はさらなる信頼向上へ課題解決を図っているが、思惑通りには進んでいない。
◇近い将来、導入20カ国目も
「ユーロは国際金融市場における大きな成功だ」。EU本部があるブリュッセルで12月に開かれた記念イベントで、パネリストとして招かれたトリシェ欧州中央銀行(ECB)前総裁は、ユーロの歩みをたたえた。発足当初11カ国だった導入国は現在19カ国。域内人口は米国を上回る規模で、近い将来、ブルガリアが名を連ねる可能性が高い。
ECBの年報によると、17年10~12月の為替市場での通貨取引高シェアは、米ドルが44%、ユーロが16%、円が11%の順。世界各国の外貨準備高の通貨構成割合では、米ドルが62%と圧倒的な地位を誇るものの、ユーロは20%を占め、円は5%にとどまった。ドラギECB総裁も「国際金融における第2通貨の地位は揺るぎない」と胸を張る。
◇財政面の統合で遅れ
ただ、通貨取引高が10年の20%で頭打ちとなるなど、ユーロのシェアは近年右肩下がりの傾向にある。09年秋のギリシャの財政赤字隠し発覚を機に、欧州債務危機に発展。一時はユーロ崩壊論まで騒がれ、信頼感が低下した。危機を教訓にユーロ圏では金融安全網の整備など体制強化も進んだが、財政面の統合は遅れており、理想とするユーロ圏の姿には程遠いのが現状だ。
「国際的な場面でユーロが十分な役割を果たすには、さらなる取り組みが必要だ」(EU欧州委員会のユンケル委員長)。ユーロへの信頼を高めるため、欧州委はユーロ圏諸国の統合深化を急ぐ。最近ではユーロの国際的役割の強化策を公表し、世界的にも米ドル決済が主流の原油取引などエネルギー分野で、ユーロ決済の促進に努める方針も打ち出した。
欧州の独立系シンクタンクのブリューゲルは、起債や融資など国際金融の分野で、ユーロのシェア拡大の余地があると指摘。債務危機を通じてシェアを落とした反省を踏まえ「ユーロ圏の金融システムの安定性が必要条件」と、ユーロ圏の改革に注文を付けた。その上で「(欧州委の強化策は)決定的な一歩というよりは、旅路の始まりにすぎない」と冷めた見方を示す。ユーロがさらなる信頼を獲得するには時間がかかりそうだ。
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