図解
※記事などの内容は2016年12月23日掲載時のものです
【ロンドン時事】欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票から半年が過ぎ、離脱交渉に備える英国。経済優先か移民対策か、政府の戦略は固まらず、企業は先の見えない状況に焦りの色を濃くしている。英国が準備不足のまま離脱すれば、関税や金融サービスなどの制度は短期間で一変し、大混乱を招くのは必至。そうした事態の回避に向け、実質的に離脱を遅らせる「移行措置」が重要になってきた。
英経済はEUとの無関税貿易や、金融機関がEUで自由に営業できる「パスポート」制度などを離脱後にどこまで維持できるかで明暗が分かれる。ただ、英・EUの新たな経済関係の基礎となる協定の取りまとめ作業は長期にわたり、発効は2019年春にも到来する離脱に間に合いそうにない。
このため、来春始まる交渉で英国がEUから有利な条件を引き出しても、離脱後の英国を新協定発効まで引き続きEU加盟国並みに扱う移行措置が講じられなければ、ロンドンの金融街シティーや、英国を欧州の玄関口として利用する外資を制度急変のショックが直撃する公算が大きい。
英イングランド銀行(中央銀行)のカーニー総裁は、重大な制度変更時は「通常4~7年」の周知期間があると指摘。強硬離脱派の重鎮、デービスEU離脱担当相も「断崖絶壁」は避けるべきだと一定の理解を示す。
もっとも、離脱でEUが対英関税を復活させたり、金融パスポートを取り上げたりすれば、企業の流出は避けられない。
世界的な保険市場を運営する英ロイズは「いかにEUとの取引を保つか」が焦点だと強調。300年余の歴史を持つロンドンでの業務の一部を他のEU加盟国に移す検討を始めた。一方、英紙フィナンシャル・タイムズによれば、在英の日系金融機関は英政府に対し、先行き不透明な状況が改善されなければ、半年以内に一部業務の移転に着手すると警告している。
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