図解
※記事などの内容は2016年6月15日掲載時のものです
英国の欧州連合(EU)残留か離脱かを問う国民投票をめぐり、同国に拠点や工場を置く日本企業の警戒感が強まっている。離脱すれば関税など新たな負担が生じかねず、欧州での事業戦略の見直しを迫られる公算が大きいためだ。
経団連の榊原定征会長は13日の記者会見で、英国のEU離脱問題について「日本の1000社を超える企業が事業を展開しており、影響は計り知れない」と指摘。日立製作所の東原敏昭社長も5月の会見で、「日立は英国がEUの一員であるという前提で英国に鉄道車両工場を建設した」と述べ、離脱については「絶対反対の立場だ」と強い口調で語った。
日立は昨年、約150億円を投資し、英国に海外初の鉄道車両工場を建設。同国がEUから離脱した場合、EU域内への鉄道車両輸出に関税が課せられる可能性があり、採算悪化を懸念している。英国内に2工場を持つトヨタ自動車も「英国事業の競争力維持の観点から残留が望ましい」(広報部)と話している。
欧州IT事業の拠点をロンドンに置き、英国全体で日本企業として最大となる約1万4000人の従業員を抱える富士通の田中達也社長は「離脱はマイナスの影響が大きい」と困惑。日本損害保険協会の鈴木久仁会長も「(保険業界への)規制が複雑になりかねない」と懸念を表明した。
EUの新薬の承認審査を統括する欧州医薬品庁(EMA)は、英国が離脱した場合、本部をロンドンからEU域内へ移転させるとみられる。英国に拠点を持つ医薬メーカーからは「新薬承認が遅れる可能性もある」(関係者)と心配する声が出ている。
国際金融の中心地であるロンドンには、三井住友銀行などが欧州を統括する拠点を構えている。金融機関はEU加盟国の一つで認可を取れば、域内で営業できる「単一パスポート制度」を利用。離脱になれば、認可取り直しなどの負担を強いられ、業務に支障が出る可能性がある。
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