図解
※記事などの内容は2016年6月15日掲載時のものです
【サウスエンドオンシー(英国)時事】欧州連合(EU)残留か離脱かを問う英国民投票では、イングランドの大都市圏以外の地方部で離脱派優勢が目立つ。こうした地域の住民はEU加盟の何が問題だと考えているのか。特に離脱派が強いとされる地区を訪ね、その理由を探った。
◇離脱派に好反応
南東部エセックス州の海岸沿いのリゾート地サウスエンドオンシーとその周辺地区は、YouGov社の世論調査によれば、全国188の地区のうち6番目に離脱支持率が高かった。
サウスエンド地区西部リーオンシーの高台にある住宅街の目抜き通りでは、離脱派が屋台を出して運動を行っていた。ボランティアの運動員が通行人に向けて「わが国を(EUから)取り戻そうではないか」と声を掛けると、車のクラクションを鳴らしたり、親指を立てたりして賛意を示す人が相次いだ。
◇文化変容に不満
離脱派は、EU内の移動の自由による東欧などからの移民急増が英国の雇用や福祉を脅かすと主張、国民投票で最大の争点の一つとなっている。サウスエンド地区はロンドン通勤圏内にあるが、住宅は比較的安く、移民が近年大量に流入したという。屋台に立ち寄った男性は「サウスエンド中心部に行ってみろ、誰も英語を話していない。自国にいて異国にいるようだ」と、移民急増への反感をあらわにした。
応援に駆け付けた地元選出下院議員(保守党)のデービッド・アメス氏も「私の選挙区で最大の問題は移民」と断言。「住民の多様性は結構だが、元から住んでいたサウスエンドっ子がいなくなるのはばかげている。文化がすっかり変わってしまった」と話した。
休日でにぎわうサウスエンドの繁華街では、残留派の運動員がビラを配っていた。「声を掛けても残留支持は15~20%」で反応は良くない。「離脱派の言う『移民の脅威』は誇張されている」と話す。
◇「漁業取り戻そう」
サウスエンド地区で離脱派が強いもう一つの大きな理由として、EUの共通漁業政策により、かつてにぎわった漁港が衰退していることも挙げられる。周辺海域には海洋保護区が設定され、漁獲量は制限されている。
リー・サウスエンド漁業協同組合のポール・ギルソン理事長は「われわれは何百年もこの海で魚介を捕ってきたが、今や海の保護のためとして漁を禁じられている」と述べ「EUからの一方的指図」に反発。「EUを離脱して漁業政策の主導権を地元に取り戻すべきだ」と訴えた。
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