図解
※記事などの内容は2016年5月2日掲載時のものです
【北京時事】中国が鉄鋼の過剰生産を続けている。行き場をなくした中国の安価な鋼材が世界に出回り、日本をはじめ各国の鉄鋼メーカーからは悲鳴が上がる。中国の「垂れ流し」が止まる兆しはなく、国際的な紛争に発展しかねない状況だ。
◇白菜より安い
「今や鉄は白菜より安い」。中国の鉄鋼業界でよく耳にする言葉だ。鋼材価格はこの5年間で半値以下になり、鉄鋼メーカーが集まる河北省では「つくればつくるほど赤字が膨らむ」と嘆く関係者の声があちこちで聞こえる。
過剰生産を招いた原因をたどると、2008年のリーマン・ショックを受けて中国政府が打ち出した大規模な景気対策に行き着く。政府の号令で不動産市場は開発ブームに沸き、鉄鋼需要も急増。乗り遅れまいと鉄鋼各社は設備増強を急いだ。
開発ブームはやがて過ぎ去った。小回りの利く中小メーカーは出稼ぎ労働者を解雇して減産に動いたが、失業者発生による社会不安を恐れる大手国有企業は雇用維持を優先。需要を無視した生産が続いたため、国内は鉄鋼であふれかえった。
◇日米欧、団結か
15年の中国粗鋼生産量は約8億トンと、10年前の2倍を超える。うち、輸出されたのは1億1240万トン(鋼材ベース)と、日本の年間生産量を上回る規模に相当。日本のメーカー関係者によると、多くの市場で中国製鉄鋼が安く売られ、日本製などに深刻な打撃を与えている。
こうした事態に米国は中国を批判。日欧などと団結し、通商紛争に発展する可能性が出てきた。6月に北京で開く今年の米中戦略・経済対話では鉄鋼が主要議題の一つとなりそうだ。
習近平指導部は赤字メーカーの整理を中心とする生産抑制を急いでいる。だが、景気が減速している折、工場の大量閉鎖といった大なたは振るいにくい。専門家は「過剰生産の解消には10年以上かかる」と事態が長期化すると予想している。
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