図解
※記事などの内容は2019年7月5日掲載時のものです
【ワシントン時事】トランプ米政権が中国による知的財産権侵害を理由とした制裁関税措置を発動してから6日で1年。2020年秋の大統領選に向けた実績づくりを最優先に強硬策を連発した。中国の激しい報復を招き、高関税の応酬となる「貿易戦争」の出口は見えない。中国のハイテク産業も標的とするなど複雑化しており、長期戦を見込んだ多国籍企業が対米輸出の拠点を中国から他のアジア諸国に移転させる動きが加速している。
米中首脳は6月29日、制裁・報復関税の応酬を見合わせる「一時休戦」で合意し、貿易協議の再開を決めたが、対立の構図は変わらず、先行きは楽観できない。米国は18年中に中国からの年間輸入実績の半分に制裁関税を発動済み。残る全ての輸入品に対象を広げる交渉カードも手放してはいない。
米中摩擦は世界の貿易構造を急変させた。米国勢調査局によると、今年5月までに中国からのモノの輸入が前年同期比12%減少する一方、ベトナムからは36%、台湾は23%、韓国は12%それぞれ増加。追加関税が課された中国産品の代替が進んでいることが浮き彫りとなった。
ピーターソン国際経済研究所は「対立が長引けば、生産コストの安い中国を軸とするサプライチェーン(部品供給網)は崩れる」と予想する。米経済団体が5月に行った調査では、中国以外への生産拠点移転を検討もしくは既に一部移転したと回答した企業は全体の4割を占めた。
トランプ政権の対中強硬策は関税以外にも広がる。安全保障上の懸念を理由にした(1)対米投資規制の強化(2)対中輸出管理の強化(3)米政府による中国製品の調達制限-が18年に法制化された。中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)などハイテク企業を厳しく締め付けるもので、「米国で政権交代があっても大幅に修正される可能性は低い」(米戦略国際問題研究所)。トランプ大統領が火を付けた貿易戦争は当面終わりそうにない。
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