図解
※記事などの内容は2019年3月4日掲載時のものです
【ワシントン時事】トランプ米政権のロシア疑惑の捜査では、2016年米大統領選に介入したロシアとトランプ陣営の間に連携や協力関係があったかどうかの解明が焦点となっている。起訴状などで明らかにされたトランプ大統領の当時の腹心ら4人の動きからは、捜査を指揮するモラー特別検察官が描こうとする両者の接点が浮かぶ。
◇ストーン被告とウィキリークス
「トランプ氏はメール暴露を事前に把握していた」。元顧問弁護士マイケル・コーエン被告が先週、元選挙顧問ロジャー・ストーン被告と内部告発サイト「ウィキリークス(WL)」の関係に関して議会で証言した内容は、トランプ氏の説明と矛盾するものだった。
16年7月22日、WLはロシアから提供を受けた民主党全国委員会(DNC)のメールを大量に暴露し、トランプ氏との対決を控えたクリントン元国務長官に打撃を与えた。証言が事実であれば、トランプ陣営がWLやロシアの動きを知って連携していた可能性も見えてくる。
メール流出後、トランプ陣営がWLの情報に強い関心を示したことにモラー氏は着目している。ストーン被告の起訴状には、同被告と連絡を取り続けるよう「陣営幹部に指示が出された」とある。ただ、その後も続いたメール暴露に関し、陣営とWLが内容やタイミングを協議したかどうかは起訴状では明らかにされていない。
◇マナフォート被告とロシア人脈
16年8月2日、トランプ陣営選対本部長だったポール・マナフォート被告は、米当局がロシア情報機関とつながりを持つとみるロシア人政治コンサルタント、キリムニク氏とひそかに面会した。特別検察官チームの検事は先月4日の法廷で、この面会に始まり、大統領選後まで続く2人の接触を「核心部分」と表現した。
モラー氏が2人の関係に注目するのは、トランプ陣営とロシアの利害が絡む重要なやりとりがあったとみるからだ。裁判記録によると、マナフォート被告はキリムニク氏に陣営の世論調査データを手渡したほか、ロシアが望んでいた対ロ制裁解除に関連した問題も話題に上った。
キリムニク氏は当時、ロシアのプーチン大統領に近い富豪デリパスカ氏と連絡を取り合っていた。「プーチン氏に直結する人脈」(米メディア)だった可能性も指摘されている。
◇長男ジュニア氏とロシア人弁護士
疑惑の核心に迫るもう一つの事例として挙げられているのが16年6月9日にニューヨーク・トランプタワーで行われたロシア人女性弁護士との面会だ。トランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏は「クリントン氏に泥を塗る情報」の提供を示唆され、弁護士をタワーに招いた。
コーエン被告は、ジュニア氏が「面会を設定した」と耳打ちし、トランプ氏が「分かった。また知らせてくれ」と答える場面を見たという。
◇コーエン被告とロシア事業
コーエン被告自身がロシアで担っていたトランプ氏のビジネスも、モラー氏が関心を抱いている。同被告は、実際には選挙が本格化する16年夏まで続いていたモスクワでのトランプタワー計画に関し、「16年1月に中止された」とうその証言をした罪に問われた。今回の議会証言で、この偽証がトランプ氏のセクロー顧問弁護士に「検閲を受け、修正された」結果だったと明かした。
大統領選でトランプ陣営がロシアに接近した背景には、クリントン氏への打撃を期待したことに加え、ビジネス上の利害も絡み合っていた可能性がある。捜査報告書で「癒着の構図」が明らかにされれば、議会がトランプ氏弾劾の是非を判断する有力な情報になるとみられる。
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