図解
※記事などの内容は2017年4月28日掲載時のものです
【ワシントン時事】米国第一主義を掲げ、国際社会から不安視されたトランプ政権の対外政策は、就任前から「180度転換」(米CNNテレビ)している。関係改善を目指したロシアと緊張が続く一方、当初批判していた中国とは友好を強調。日韓など同盟国との関係重視も打ち出し、現実を踏まえた対応に変化し始めたと見る向きもある。ただ、「予測不能」を売りにして発言が二転三転するトランプ大統領の中長期的な戦略は見えてこない。
大統領は選挙中、北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」と批判。在日米軍についても駐留経費の負担増に応じなければ撤退もあり得ると示唆するなど、同盟関係を軽視する発言を繰り返した。ところが、就任後は「NATOのことをよく知らなかった」と支持に転向。在日米軍に関しても「受け入れを感謝する」と語り、負担増を求めることはなかった。
対中政策も大きく転換した。選挙戦では中国を「為替操作国」に認定すると公約。就任前には台湾総統と異例の電話会談を行った上、中国本土と台湾を不可分とする「一つの中国」に縛られない姿勢まで示し、中国の猛反発を招いた。
しかし、就任後は、習近平・中国国家主席との電話会談で「一つの中国」政策の尊重を表明。4月の首脳会談後は、習主席との相性が「非常に良い」と強調するようになった。さらに、「中国が北朝鮮問題で米国に協力している時に、なぜ為替操作国と呼ぶだろうか」と、公約を事実上撤回した。
その北朝鮮に核・ミサイル開発計画を放棄させるため、経済制裁強化と外交手段で圧力をかけるのがトランプ政権の方針。「すべての選択肢がテーブル上にある」と武力行使の可能性を残しつつ、実際は北朝鮮に影響力を持つ中国の取り組みを見守る考えとみられる。そのためにも米中の摩擦は極力避けるべきだと判断したようだ。
対シリア政策では今月6日、アサド政権が化学兵器を使用したと断定し、空軍基地に巡航ミサイル攻撃を敢行。トランプ外交の出方をうかがう中国、ロシア、北朝鮮にも衝撃を与えた。
過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を最優先とし、アサド政権への対応は棚上げする方針だったが、空軍基地攻撃の後でティラーソン米国務長官は「アサド家の支配体制が終わりに近づいている」と述べ、将来のアサド政権存続を容認しない構えを明確に打ち出した。
もっとも、今回の攻撃は化学兵器問題で「レッドライン(越えてはならない一線)」を越えたアサド政権への警告。長期的な戦略に基づいた行動でなく、シリア和平推進につながるかは不透明だ。アサド政権の後ろ盾であるロシアとの関係も緊張し、大統領が選挙戦から模索していたロシアとの関係修復やIS掃討での協力は困難になった。
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