図解
※記事などの内容は2017年1月17日掲載時のものです
20日に米大統領に就任するトランプ氏は、「米国第一主義」の経済・通商政策を掲げる。実行された場合、世界に貿易保護主義が広がり、主要国間で報復措置の連鎖につながる恐れが強まる。日本政府は、戦後の世界経済の拡大を支えた自由貿易体制の堅持をトランプ新政権に働き掛ける方針だが、成算は見通せない状況だ。
トランプ氏は米国第一主義の政策として、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、製造業の米国回帰を促す「国境税」の導入、貿易不均衡の是正要求を表明してきた。
雇用創出策の「国境税」は、米国製品の輸出企業の税負担を軽減し、輸入企業への課税を強化する仕組みとされる。世界貿易機関(WTO)協定が禁じる輸出補助金に当たるとの見方もある。トランプ氏は通商担当の閣僚に対中強硬派を指名しており、中国に巨額の対米貿易黒字削減などを迫るのは必至。米国の保護主義的な貿易措置を引き金に、「主要国間の報復合戦への発展」(日本外務省幹部)もあり得ると不安が広がる。
日本政府の最大の気掛かりは、同氏が公約通りに大統領就任初日にTPP離脱を宣言するかどうかだ。国務長官に指名されたティラーソン氏ら閣僚候補からはTPPに理解を示す発言が出ているが、トランプ氏の真意は読めない。
NAFTAの再交渉は容易でないとの見方があるが、同氏の意に沿う形で米国とメキシコ、カナダの間の関税が大幅に引き上げられると、メキシコなどに進出している自動車メーカーなど日本企業には大打撃となる。
トランプ氏が重視する2国間の通商戦略では、日本にも矛先が向けられかねない。1989~90年の日米構造問題協議で日本は経常黒字縮小を約束した「実績」がある。トランプ政権からは、対米黒字削減や農産物市場開放で厳しい要求を突き付けられる恐れがある。
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