図解
※記事などの内容は2016年11月10日掲載時のものです
【ワシントン時事】衆院での環太平洋連携協定(TPP)承認案・関連法案が可決し、日本の批准は確実になった。一方、米国では「TPP離脱」を掲げたトランプ氏の大統領選勝利を受け、承認が極めて困難になった。ベトナムなどは承認手続きを来年以降に持ち越し、動向を見極める構え。合意国は「内向きの米国」に懸念を強めている。
12カ国が署名したTPPが発効するには、域内の国内総生産(GDP)合計の6割を占める米国の議会承認が必須条件となる。オバマ大統領は、来週開く「レームダック(死に体)議会」にTPP実施法案を提出し、来年1月までの任期中に批准したい考えだが、上院共和党トップのマコネル院内総務は9日、年内審議は「確実にない」と表明した。
米国の承認が困難になり、安倍政権による「日本が率先して承認し、早期発効の機運を高める」という意気込みは空回りで終わりそうだ。米ブルッキングス研究所の専門家は9日、「TPPがその名前のまま生き残るのは難しい」と指摘。トランプ氏が掲げた保護主義的な政策が米経済活動を損なうと懸念を示した。
ベトナムやチリ、オーストラリアなどは、トランプ次期政権の正式な対応を見極める見通し。マレーシアは年初に議会が承認したものの、批准に必要な関連法の整備はさらに遅れる公算が大きい。
メキシコとニュージーランドは日本に続き、年内に議会手続きを終えるとみられていたが、状況は不透明さを増した。特にメキシコは、トランプ氏が「不公正貿易」を批判しており、摩擦が懸念される。
議会承認が不要なシンガポールのリー・シェンロン首相は8月に「米国が速やかにTPPを批准しなければ、域内での信頼を失う」と警告しており、それが現実になる恐れが高まってきた。
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