図解
※記事などの内容は2019年11月9日掲載時のものです
【ニューヨーク時事】2020年米大統領選に向けた野党民主党の候補者指名争いで、急速に支持を広げる左派のウォーレン上院議員に対し、米ウォール街の警戒が強まっている。格差是正を訴える同氏は、大企業と富裕層を対象に10年間で6兆ドル(約660兆円)規模の大増税を提唱。「反ビジネス」色の濃い政策によって、民間の自由な経済活動を重視する米資本主義の基盤が損なわれるとの懸念が台頭している。
国民皆保険制度の導入を目指すウォーレン氏は、10年間で20兆5000億ドルの財源を確保する計画を公表。中間層の負担を増やさないために導入するのが富裕層への3兆ドルの増税で、5000万ドル以上の純資産には年2~6%の税率を適用する。また、トランプ政権が実現した法人税減税も撤廃し、35%への税率引き上げなどで大企業にも3兆ドルの増税を強いる。
「ウォーレン大統領が誕生すれば、米株価は25%下落するだろう」。「反ウォーレン」の急先鋒(せんぽう)で、米ヘッジファンド業界の大物レオン・クーパーマン氏は、大増税を「米経済には害悪」と切って捨てる。一方、ウォーレン氏も「現状維持はウォール街のためにしかならない。富豪との戦いを恐れない」と激しく応酬する。
巨大IT企業分割、時給15ドルへの最低賃金引き上げ、シェールオイル・ガス開発禁止―。ウォーレン氏の急進的政策が低・中所得者層に受け入れられている背景には、過去最長の景気拡大にもかかわらず、一向に縮小しない所得格差や大企業への不信感がある。
ウォーレン氏は、大企業の取締役の4割を労働者代表から選出するなど企業社会の変革も迫る。だが、米金融最大手JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は「経営の在り方を完全に変えてしまう。自由な企業による経済体制が米国の基礎だ」と猛反発している。
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