図解
※記事などの内容は2019年11月2日掲載時のものです
【ワシントン時事】来年11月の米大統領選挙まであと1年。トランプ大統領が就任1年目に実現させた大型減税効果が息切れする中、政権が仕掛けた中国との貿易戦争は深みにはまり、好調だった景気に影を落とし始めた。関税を武器にした圧力一辺倒の交渉手法には手詰まり感が漂い、トランプ氏は再選の成否を握る経済政策で正念場に立たされている。
「米国史上最も素晴らしい景気だ」。トランプ氏は1日、最高値を更新した株価や底堅い雇用を誇った。一方、8月の世論調査では、関税を振りかざした通商交渉など経済政策への不支持が初めて支持を上回った。回答者の6割が来年は「不景気」と予想。足元の製造業景況感は3カ月連続で「不況」となり、先行き不安が強まっている。
議会では野党民主党が下院で多数派を占める「ねじれ」状態で、有権者にアピールできる所得税減税などの可決は困難な情勢だ。こうした中、トランプ氏は景気浮揚の手段として金融緩和をあてにする。
トランプ氏は対中制裁関税の対象を広げるたびに、株高を狙って米連邦準備制度理事会(FRB)に利下げを執拗(しつよう)に迫り、FRBは結果的に7月以降3回連続で政策金利を引き下げた。最近では日本や欧州が導入するマイナス金利に対抗する必要性にも言及し、大幅利下げへ圧力をかけ続けている。
米中は10月、貿易協議の部分合意で歩み寄りを見せた。ただ、「岩盤」と言われるトランプ氏の中核支持層は対中強硬政策を求めている。景気に配慮して中国に過度に譲歩すれば、こうした支持層の離反を招きかねない。
トランプ氏の企業献金の受け皿となるスーパーPAC(政治活動委員会)は「リセッション(景気後退)入りすれば、テロ攻撃に見舞われるのと同等の大打撃だ」と危機感を強めている。
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