図解
※記事などの内容は2018年6月1日掲載時のものです
東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却が完了した。2017年3月期に債務超過に陥り、5529億円のマイナスとなった株主資本は、昨年12月の増資と今回の9700億円の売却益で、今期末には1兆8700億円のプラスに回復する見通し。15年の不正会計発覚後、3年にわたった上場廃止の危機を脱したが、医療機器と半導体という成長事業を売却した代償は大きく、再建へいばらの道が続く。
不正会計では、過去7年間で2248億円の利益かさ上げが判明し、決算訂正で赤字に転落。不振の米原発事業でも損失処理を迫られた。16年3月期に負債が資本を上回る債務超過を回避するため、業績好調の医療機器子会社を6655億円でキヤノンに売却した。
だが、16年12月末に米原発事業での新たな巨額損失を公表。06年に買収した米原発大手ウェスチングハウスは17年3月に破綻し、東芝は同年3月期に国内製造業で過去最大となる9656億の赤字を出し、債務超過に転落した。東証ルールで上場廃止となる2年連続の債務超過を回避するため、稼ぎ頭の東芝メモリ売却を決断。「物言う株主」らを引受先とする6000億円の増資も行った。
車谷暢昭会長兼最高経営責任者は5月中旬の決算記者会見で、債務超過解消を踏まえ、「ようやくスタートラインに立てた」と述べ、新たな経営計画を策定すると表明した。
コスト管理を徹底して赤字事業の立て直しを図る一方、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の技術を活用した事業の強化を検討している。製品納入から保守・運用までサービスを提供し、収益を継続的に得られる仕組みの構築を目指す。だが、こうした事業モデルは国内外とも競争相手が多い。稼ぎ頭の相次ぐ売却で売上高はピーク時の半分に縮小しており、新たな「稼ぐ力」の開拓が急務だ。
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