図解
※記事などの内容は2017年5月16日掲載時のものです
東芝による記憶用半導体フラッシュメモリー事業の売却は、時間との戦いとなってきた。19日の2次入札を控え、同事業で提携する米ウエスタンデジタル(WD)が、売却差し止めを求めて法的措置を行使。売却の実現すら不確かでは、入札は形だけのものになりそうだ。来年3月末までに売却益で債務超過を解消できなければ、上場廃止となるだけに時間的余裕は少ない。
メモリー事業売却をめぐり、WDは東芝との合弁契約に基づく独占交渉権を要求。しかし、東芝はWDの提示額が低かったことに加え、同業者の出資による独占禁止法審査の長期化を懸念して拒否した。この結果、WDは米国時間の14日、国際仲裁裁判所に対し、同社の同意のない売却の差し止めを申し立てた。
東芝の綱川智社長は15日の記者会見で「契約に抵触する事実はなく、売却手続きを止める根拠はない」と主張。2次入札も予定通り実施する考えを示した。
だが、国際仲裁手続きは結論が出るまで通常1年半~2年かかるとされる。自動車大手のスズキが2011年に、独フォルクスワーゲンとの提携解消を求めたケースは約4年を費やした。
東芝は「WDは(交渉を有利にするため)時間をかける作戦」(幹部)と警戒するが、時間的制約から対決姿勢には限界がある。16日には事前に通告していたWDによるメモリー関連の情報アクセスを遮断する対抗措置について「判断を保留」(広報担当者)して実行せず、和解の糸口を探り始めた。
WDも「同社のメモリー事業は、東芝が倒れれば立ち行かなくなる」(元幹部)という事情を抱え、チキンレースの様相も出ている。
東芝は2次入札で候補を絞り、6月下旬の株主総会までに売却先を決めたい考え。同社幹部は2次入札に関し「まだ諦めてない」と話す。
ただ、1次入札を通過した台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業など他陣営の中には、東芝とWDの対立激化で様子見の姿勢に転じたところも出てきたもようだ。有力視されている政府系の産業革新機構と米投資ファンドの「日米連合」も一段の資金の上積みが必要とされ、当初の売却スケジュールは崩れつつある。
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