図解
※記事などの内容は2019年7月19日掲載時のものです
サンマの資源管理を協議する北太平洋漁業委員会(NPFC)の年次会合で、日本や中国、台湾など加盟8カ国・地域は年約55万トンの漁獲枠(上限)導入に合意した。乱獲防止が目的で、サンマ漁を国際的に規制するのは初めて。水揚げを急速に伸ばす中国は上限設定に反対してきたが、今回は一転賛成に回った。
-漁獲枠は必要なのか。
サンマは近年不漁が続いている。日本の漁獲量は最盛期の1958年に約58万トンだったが、2015年以降は10万トン前後と6分の1の水準に低迷。このままだと漁業資源が枯渇し、秋の味覚の代表格であるサンマが食卓から遠のく懸念がある。
-不漁の原因は。
サンマは夏から秋にかけて、公海から日本の主な漁場である排他的経済水域(EEZ)に回遊してくる。しかし、大型船で操業する中台がEEZ手前の公海で大量に「先取り」している。地球温暖化による海水温の上昇も影響し、日本の漁獲量は急減している。一方、サンマを食べることが一般的となった中国では、18年の漁獲量が約9万トンと日本並みに増えている。
-中国は規制に反対だった。
日本は17年と18年の年次会合で、各国・地域別の漁獲枠設定を提案した。ただ、十分な資源量があると主張する中国などが反発し決裂。今回は国・地域別ではなく、より受け入れやすい全体枠の導入に提案を切り替えた。
-中国が賛成に転じた背景は。
合意形成を優先する日本が、北太平洋全体で上限を45万トン前後とする当初案から10万トン上積みし、中国に譲歩したことが大きい。中国は資源量の科学的データが存在しないことも規制反対の理由の一つとしてきた。ただ、今年4月のNPFCの科学委員会でサンマの資源量に関し、中国を含む全加盟・地域が低水準にあるとの見解で初めて一致し、歩み寄りの余地は生まれていた。
-サンマは増えるのか。
今回、北太平洋全体の枠を約55万トンとし、公海に33万トン、EEZに約22万トン配分することで合意した。公海は18年実績並みに抑えられたが、枠全体で見れば、同年の漁獲実績(約44万トン)を大きく上回るため、資源回復につながるかは未知数だ。国・地域ごとの枠は来年の会合で検討し、日本は全体の漁獲上限の縮小にも取り組む方針だが、難航が予想される。
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