図解
※記事などの内容は2019年7月6日掲載時のものです
人口減少や食の多様化を背景に国内のコメ消費が減少の一途をたどる中、海外に活路を見いだす農家や流通業者が増えている。2018年の輸出量は約1万3800トンと8年間で7倍超に増加。日本酒を中心とする加工品を含むと3万トン強に上るが、政府が目標とする10万トンにはほど遠い。一段の輸出拡大には価格の高さや各国の輸入規制など解決すべき課題も多い。
精米したばかりの日本産米を扱う米ハワイの小売店「ザ・ライス・ファクトリー・ホノルル」には、地元客が定期的に訪れる。和食ブームを追い風に、中でも有機栽培米が人気だ。運営するWakka Japan(札幌市)は、日本各地で買い付けたコメを海外へ輸出・販売しており、香港やシンガポールなどに加え、近く米ニューヨークに出店する予定だ。
農林水産省も国内の生産基盤の維持とコメ余り回避を両立させるため、予算措置を講じて輸出を支援している。京都府与謝野町のコメ生産法人、京都祐喜は中国への輸出を昨年始めたばかりだが、量はすでに国内向けを上回る規模に拡大。香山喜典社長は「国内向けより高収益だ」と話す。
しかし、こうしたコメは一部の富裕層向けが中心。例えば、中国のスーパーでは1キロ400円程度の米が多いのに対し、日本産米は1500円前後。中国に進出する日系和食企業も「使いたいが利益が出ない」(すしチェーン)と使用に二の足を踏む。
日本の生産地の一部では、ロボット技術の活用や収穫量の多い品種の導入を通じ、低コスト米を生産する動きが始まっている。ただ、「耕地面積の狭さや人件費がネック」(茨城県の輸出農家)といい、道のりは半ば。また、有望市場の中国が、日本国内に3カ所しかない専用施設で精米することを輸入の条件とするなど、規制面でのハードルも残る。
国による生産調整(減反)政策が幕を閉じ、2018年産米から農家は自由にコメを作付けできるようになった。一方で国内消費量は年10万トンのペースで減少。海外市場の重要性は、今後ますます高まる。
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