図解
※記事などの内容は2019年8月28日掲載時のものです
金融庁が28日公表した2019年度金融行政方針は、地銀の経営改革が待ったなしの状況にあるとの認識を強調する内容となった。地銀への出資規制に特例を設けるなどの規制緩和策を打ち出しているのは、収益が悪化する地銀に再編や提携、事業改革を急がせる狙いがある。人口減少などに伴い地方の衰退が進めば貸し出しなどの金融仲介機能が失われかねず、警戒感を強めている。
「救済前の早め早めの対応が必要だ」(金融庁首脳)。同庁がまとめた19年3月期の地銀決算によると、本業のもうけが5年以上赤字となっている銀行は23行から27行に増加した。危機的状況にもかかわらず、地銀による自発的な改革の動きは緩慢だ。しびれを切らした金融庁は、6月に見直した「早期警戒制度」で、地銀の経営が実際に悪化する前の段階で対応するよう経営者に求め、改善が見込めない場合、業務改善命令などの厳しい処分も辞さない方針を示した。
今回、地銀への出資規制を緩和し、銀行が他行に資本参加しやすくするのは、株式持ち合いで信用リスクが波及する懸念よりも、出資によって健全性が向上する効果を重視した結果だ。自力再建が難しく、救済が必要な段階まで経営が悪化すれば救済先を見つけることは困難になる。
金融機関が破綻に備えて積み立てる預金保険料をめぐり、健全性が高まれば保険料が下がる仕組みを柱とする「可変料率」導入を検討すると踏み込んだのも「経営改善に取り組むインセンティブにしたい」(金融庁幹部)との意図がある。
金融庁は、苦しい経営環境が見込まれる地銀への監視を、経営陣との対話や監督、検査とあらゆる手法で強める構えだ。
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