図解
※記事などの内容は2019年8月16日掲載時のものです
米国で長期金利が急低下して短期金利を下回る金利の逆転現象が起きた。「逆イールド」と呼ばれ、景気後退の予兆とされる。米中貿易摩擦の激化を受けて投資家が株価下落などのリスクを回避しようと、資金を安全な資産に振り替える動きが背景にあり、日本でも長期金利は低下している。
-そもそも長期金利って何?
返済期間が長いお金を借りる時にかかる利率のことだ。日本では10年後に償還(返済)される国債の流通利回りが重要な指標となっている。
-難しいな。流通利回りはどう決まるの?
銀行や保険、証券会社など大口の投資家が国債を売り買いする債券市場で決まる。満期を迎える国債の償還額や利息は変わらないので、安く買えれば投資したお金の増加分(利回り)が大きくなる。つまり、価格が下がると利回りが上がる関係だ。
-どういう時に金利が下がるの?
さっきとは逆に、国債の価格が上昇した時だ。
国が発行する国債は民間企業の株式より投資利回りは低いが安全とされるため、景気が悪くなりそうな時に需要が高まる。すると価格が上昇(利回りは低下)する。
-米国で逆イールドが起きたそうだが。
お金が返ってくるまでの期間が長いほど、その間に不測の事態が起こるリスクが大きくなるので、普通は返済までの期間が長いほど流通市場の利回りは高くなる。ところが、米国では10年物の利回りが急低下し、2年物を下回る現象が発生した。こうした長短金利の逆転を逆イールドと呼び、景気後退の前兆とされている。
-日本はどうなっているの。
トランプ米大統領が今月1日、中国に対する制裁関税の強化を表明すると、日本も長期金利が急激に下がった。2年物も下がったが、将来の景気見通しと関連が深いとされる10年物の下げ幅の方が大きく、その差は小さくなっている。
-大変だ。日本も逆イールドになるのかな。
その可能性はある。ただ、日本では日銀が景気を下支えする金融緩和の一環として国債を大量に買っているため、長期金利が単純に景気の見通しを反映しているとは言えない。もし10年物の利回りが2年物より低くなったとしても、急に景気が悪くなることはないという見方が有力だ。
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