図解
※記事などの内容は2019年8月15日掲載時のものです
金融界が、認知症や加齢で判断力の低下した高齢者へのきめ細かな対応に力を入れている。社会の高齢化が進む中、認知症高齢者らとの取引をめぐるトラブルが「増加傾向」(大手銀行幹部)にあるためだ。各行は研修を通じ症状への従業員の理解を深めるとともに、疑いがある高齢者の預金引き出しなどの手続きには家族の同席を求めるようにしている。
認知症の診断を受けた高齢者は、家族ら後見人を伴わなければ金融機関と取引できない。そのため預金の引き出しや解約が難航する事態が発生している。また、判断力が低下した状態で営業を受け、元本割れリスクが高い外債を購入してしまうケースもあった。
厚生労働省によると、2015年に525万人だった認知症高齢者は25年には730万人に達する可能性がある。個人金融資産1800兆円余りのうち6割超を高齢者が保有しており、金融機関が認知症高齢者と向き合う機会は今後さらに増える見通しだ。
仮に対応を誤れば信頼失墜につながるため、行員は顧客の判断力の有無を見極める必要がある。銀行や証券、保険各社では認知症に関する知識を持つ「認知症サポーター」社員の養成を加速。三井住友銀行などでは認知症が疑われる高齢の顧客が来店した場合、家族の同席を求め、顧客の状況把握を徹底するように指導している。
行員の養成に当たる三井住友信託銀行の植木敏晴フェロー主幹は「目先のもうけではなく、お客さまと世代を超えてつながることが重要だ」と金融機関側が目指す姿勢を説明する。
一方、上級ファイナンシャルプランナーの太矢香苗さんは、高齢者や家族が理解できない商品を勧めないよう訴えた上で、家族も預金を引き出せるよう「代理人カードを作るなど、予防策を講じることが大事だ」と話している。
新着
会員限定