図解
※記事などの内容は2017年5月6日掲載時のものです
高齢者をだまして、お金を振り込ませる還付金詐欺の被害が急増する中、地域金融機関を中心に現金自動預払機(ATM)の利用を一部制限する動きが広がっている。預金者に不便を強いることにもなるが、名古屋銀行の中村昌弘頭取は「高齢者が被害を受ける現状に義憤を感じて決断した」と話す。取り組みが先行する地域では被害防止の効果も出始めており、大手銀行も含めた対応が進みそうだ。
還付金詐欺は、自治体職員に成り済ました犯人が高齢者に払い過ぎた医療費などの還付を受けられると誘い、ATMの操作を電話で指示しながらお金を振り込ませるのが主な手口。警察庁によると、2016年の被害額は前年比67.4%増の42億6000万円に上り、振り込め詐欺の中でも急速に広がっている。
被害を防ぐため、愛知県では岡崎信用金庫が昨年11月、3年以上ATMで振り込み実績がない70歳以上の預金者の振込限度額を「0円」に設定。ATMでキャッシュカードによる振り込みができないようにした。
その後、同県内では4月までに全15信金と名古屋銀など全3地銀が同様の0円設定を実施した。これまでに「預金者から不満の声は出ていない」(地銀関係者)といい、昨年8月に1カ月で66件だった県内の還付金詐欺の認知件数は今年2月に1件まで激減した。
警察庁によると、3月末までに19都県の90金融機関が振込限度額の引き下げなどの対応を実施した。群馬、福井、岡山などで全信金が振り込みの制限を実施しており、地銀では福島銀行(福島市)、北日本銀行(盛岡市)、栃木銀行(宇都宮市)、琉球銀行(那覇市)なども始めた。5月以降、鳥取と島根の全信金、山梨中央銀行(甲府市)、香川銀行(高松市)などが利用制限に踏み切る。
一方、大手行は預金者数が多いため、「顧客の利便性を損なう一律の規制は簡単ではない」(関係者)と説明する。しかし、犯人グループが大手行のATMを使うよう誘導するケースもあり、「利便性と公共性のバランスを取りながら実効性のある対策を考える」(別の大手行関係者)という。
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