図解
※記事などの内容は2016年5月2日掲載時のものです
「500万円までのローンをご利用いただけます」。パソコン画面に表示された案内に従って申し込むと最短で3日後にはお金を借りることができる。インターネット通販大手による出店者向け融資が、急速に残高を伸ばしている。迅速な融資を可能にするのは、販売額の推移など膨大な取引情報を集めたビッグデータの分析だ。銀行の「本業中の本業」である融資分野でも異業種が存在感を高めている。
「1年で売り上げが3割も伸びた」と喜ぶのは、ネットで介護用品や家電製品を販売するサン・ダンス(東京)の久田朝代社長。アマゾンジャパン(東京)の出店者向けウェブページで融資可能額を見て申し込むと、本人確認書類を送るだけで3日後に約100万円が振り込まれた。加湿器や除雪機など季節の売れ筋商品をタイミング良く仕入れ、商機を逃さずに売ることができた。
地元金融機関に相談をしたこともあったが、決算書や事業計画書作成など煩雑な作業を求められた末に融資を断られた。銀行の方が金利は低いが小規模事業者にはハードルが高く、久田さんは「アマゾンの方がかゆいところに手が届く」と話す。
アマゾンは決算書の提出は求めない。「今何がどれだけ売れているのか」「購入者に評価されているか」など生の取引情報を集め、これを独自プログラムで分析して成長性を判断。出店者ごとの融資可能額(10万~5000万円)を自動的にはじき出す。過去の収益実績や担保を重視する既存の銀行とは全く異なる手法だ。
2014年2月にサービスを開始したアマゾンの融資総額は15年には前年比2倍に拡大した。昨年10月から同様のサービスを始めた楽天も順調に融資額を伸ばす。銀行が貸し出し難にあえぐのを尻目に、「貸出先はいっぱいある」(アマゾンの星健一セラーサービス事業本部長)とさらなる成長を見込む。
既存の銀行も、振り込みや口座の出入金記録など膨大な情報を持つが、詳細な取引内容までは把握できていない。金融サービスをめぐる新旧両勢力の攻防の行方は、ビッグデータの質と活用方法が大きな鍵を握りそうだ。
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