図解
※記事などの内容は2016年5月2日掲載時のものです
ITと金融を融合した「フィンテック」と呼ばれるサービスが暮らしに浸透しつつある。主な担い手は新興ベンチャー企業。決済・送金のほか、融資や投資助言など既存金融機関の独壇場だった領域に新技術を活用して、利用者の支持を広げている。フィンテックは金融サービスの革新者なのか、伝統的な金融業の破壊者なのか。日本の最前線で起きている変化を探った。
多くの観光客でにぎわう東京・原宿。外国人向けに着物をレンタルする「さかえ屋呉服店」東京店は、4年前にインターネット上の仮想通貨「ビットコイン」で代金を支払えるシステムを導入した。店長の越智香保利さんは「既存の決済手段に疑問があった」と理由を説明する。
海外から代金を送金する際、大手金融機関を使えば1件当たり数千円の手数料は当たり前。ビットコインなら手数料はほとんどかからない。実際に支払いに使用した客はまだいないが、来店客とビットコインの話で盛り上がることもあるという。越智さんは「話題になることで着物文化が脚光を浴びてくれれば」と語る。
安くて簡単な決済・送金手段として普及が期待されたビットコインだが、2014年2月に当時世界最大の取引所だったマウントゴックス(東京)が突然サービスを停止し、運営会社が経営破綻した。利用者は預けた資産を引き出せなくなり、安全性に対する疑念が広がった。
ただその後、経営者が顧客資産を横領したとして逮捕・起訴されたため、業界関係者は「ビットコインそのものへの疑いは晴れた」と胸をなで下ろした。政府も重い腰を上げ、仮想通貨の交換業者を金融庁の監督対象とする法改正が今国会で実現する見通しだ。事件から2年以上がたち、ようやく利用者保護に道筋が付く。
ただ、ビットコインは値動きが激しいため、現状では投機を目的とする市場参加者が多いのが実態だ。国内最大の取引所を運営するビットフライヤー(東京)の加納裕三社長は「参加者が増え相場が落ち着けば、決済手段として使いやすくなる」と期待。「銀行が手掛けていない小口送金の市場を活性化させて、新たな需要を生み出したい」と将来像を描く。
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