図解
※記事などの内容は2019年7月4日掲載時のものです
最低賃金引き上げの目安を決める厚生労働省の中央最低賃金審議会が4日、今年度の議論を開始した。政府はこれまで「年率3%程度」と水準を示してきたが、今年度の方針には具体的な上げ幅を明記せず「より早期に全国平均で1000円を目指す」とするにとどめた。月内に目安が決まり、10月に改定が実施される予定だが、中小企業を中心に警戒感は強く、賃上げが加速するかどうかは見えない。
2018年度の全国平均の最低賃金は、前年度比26円増の時給874円となり、過去最高を更新した。ここ3年と同様に3%の引き上げが続けば、19年度は900円台に達し、23年度には1000円を超える計算となる。
ただ、全国平均は労働者が多い大都市の比重が高く、都道府県別の最低賃金を見ると、18年度は40道県が全国平均を下回る水準だった。最高は東京の985円、最低は鹿児島の761円と、200円以上の格差があり、地方の人口流出につながっているとの指摘がある。
地域格差だけでなく、水準自体が低すぎるとの批判もある。鹿児島県の最低賃金で月170時間働いても、月収は13万円に届かない。労働者からは「仕事を掛け持ちして休みなく働いても、子供を塾に行かせられない」など、悲痛な訴えが聞かれる。
根本匠厚労相は4日の審議会で「成長と分配の好循環を継続し拡大するには、最低賃金を含めた賃金引き上げを通じ、消費の喚起を図る必要がある」とあいさつし、政府の目標実現に向けた審議を求めた。
一方、全国平均は直近3年で76円上昇し、企業の負担は着実に増している。日本商工会議所の調査では、18年度の引き上げで中小企業の4割近くが影響を受けた。大幅な引き上げがあれば残業時間や一時金を減らすと回答した企業も多いとし、日商は「賃金増に必ずしも直結しない」と警告している。
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