図解
※記事などの内容は2019年6月21日掲載時のものです
日産自動車が株主総会に提出する企業統治改革の議案に対し、筆頭株主のフランス自動車大手ルノーが採決の棄権を表明していた問題は、日産が人事面でルノーに譲歩することで決着した。議案が不成立に追い込まれ、経営が混乱する事態を避けるため、苦渋の決断を迫られた格好だ。ルノーの介入は今後も続くとみられ、経営の独立性を確保したい日産の前途は多難と言える。
日産は25日の株主総会で、企業統治改革に向け社外取締役が経営監視で強い権限を持つ「指名委員会等設置会社」に移行する議案を諮る。「指名」「報酬」「監査」の3委員会を設置し、役員人事などの決定過程を透明化する。
日産はルノーのジャンドミニク・スナール会長だけを指名委に迎える考えだった。ところがティエリー・ボロレ最高経営責任者(CEO)の処遇も要求するルノー側は、6月に入ると改革案の採決棄権を通告してきた。
喫緊の課題である企業統治改革を人質にした露骨な干渉に対し、日産内部には「ルノーの評判を落とすことになる」(幹部)と反発が広がった。しかし、総会を乗り切るためにはルノーの賛成が不可欠。日産は「戦略委員会」を新設してボロレ氏を迎える案などを示し、妥協点を探ったが、最後は同氏の監査委入りで折り合った。
外部有識者らが3月にまとめた改革の提言では、主要株主の元幹部らが監査委に入るのは「望ましくない」としていた。ボロレ氏が委員になることは提言に反する。日産関係者は「提言の精神は尊重するが、パートナーのルノーの意見を無視することはできない」と苦しい胸中を明かす。
日産との経営統合を目指すルノーは、トップ2人を委員会に送り込み、引き続き揺さぶりをかけてくるとみられる。
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