図解
※記事などの内容は2019年5月18日掲載時のものです
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が東京地検特捜部に逮捕され、失脚してから19日で半年。日産はゴーン被告が敷いた拡大路線の見直しを進めているが、急激な業績悪化に直面し、連合を組むフランス自動車大手ルノーに対する発言力の低下が懸念されている。ルノーは虎視眈々(たんたん)と経営統合を狙っており、日産への圧力を一段と強めそうだ。
「昨年いきなり事件が起き、ルノーとの関係を含めて事業に集中できなかった」。日産の西川広人社長は14日の決算記者会見で、ゴーン問題の経営への影響に言及した。
連合の要だったゴーン被告の逮捕後、日産とルノーは主導権をめぐって対立。西川氏は事件の事後処理に追われ、経営課題への対応が遅れた。また、品質問題を含む一連の不正でイメージが悪化し、国内販売は計画を下回った。
2019年3月期の連結純利益は、前期比57%減の3191億円と低迷。主力の米国市場で値引き販売を続けた後遺症が残り、20年3月期は1700億円とさらに10年ぶりの低水準に沈む見通し。西川氏は「相当無理な拡大をしてきた。これからは着実に成長したい」と語り、ゴーン流の経営と決別する決意を示した。
日産との経営統合を目指すルノーのジャンドミニク・スナール会長も、「まずは業績回復に集中すべきだ」と西川氏を支援する姿勢だという。
従来、ルノーの利益の約半分は日産への出資比率に応じた計上額が占めていた。しかし日産の急激な業績悪化によって、19年1~3月期のルノーの利益は5600万ユーロ(約70億円)押し下げられた。ルノー側の危機感は強く、今春には日産との統合に向けた助言業務で日本の大手証券会社を起用した。
日産はルノーに株式の43.4%を握られているが、稼ぐ力を背景に「われわれが連合の大黒柱だ」(幹部)と自負してきた。業績低迷が続けば、経営効率化に向けた統合の「口実」をルノーに与える可能性がある。
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