図解
※記事などの内容は2018年12月28日掲載時のものです
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)をめぐる事件で、同容疑者が日産資金を流用したなどとされる特別背任容疑の捜査では、日本版「司法取引」が利用されていないことが関係者への取材で分かった。ゴーン容疑者の3回目の逮捕から28日で1週間。東京地検特捜部は同容疑者が日産を「私物化」していたとみて捜査を急いでいる。
特捜部は先月19日と今月10日、ゴーン容疑者と側近の前代表取締役グレッグ・ケリー被告(62)=保釈=を、同容疑者の役員報酬を隠した金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。
関係者によると、この事件の捜査で特捜部は、ゴーン容疑者の本来の報酬額などを文書にまとめた元秘書室長ら同社幹部2人と司法取引に合意。資料提供や証言の見返りに刑事処分を軽減する約束をした。
日産資金の流用疑惑は、報酬隠し事件で押収した資料や、関係者の証言を精査する中で浮上し、特捜部は虚偽記載罪での追起訴後に再逮捕する方向で捜査。既に日産側が全面協力していることや、日産関係者の関与の程度を考慮し、司法取引の利用を見送ったとみられるという。
再逮捕は来年1月4日を軸に検討されていたが、ゴーン容疑者が保釈される可能性が出たため、前倒しされた。
ゴーン容疑者の3回目の逮捕容疑などによると、同容疑者は2008年10月、約18億5000万円の評価損を抱えた私的なデリバティブ(金融派生商品)取引の契約を日産に移転。証券取引等監視委員会に問題視されて契約を戻した際、信用保証に協力したサウジアラビア人実業家側に09年6月~12年3月、日産資金計1470万ドル(現在のレートで約16億円)を送金したとされる。
ゴーン容疑者は「契約を戻しており、日産に損害はない。送金は業務の対価だ」などと容疑を否認している。
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