図解
※記事などの内容は2018年12月2日掲載時のものです
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が巨額の報酬を隠したとして東京地検特捜部に逮捕され、3日で2週間。手口とされる「退任後報酬」をめぐり、容疑を否認するゴーン容疑者の主張が徐々に明らかになり、検察側、弁護側の対立点が見えてきた。
ゴーン容疑者の逮捕容疑は、2010~14年度の役員報酬が99億9800万円だったのに、有価証券報告書には49億8700万円と虚偽記載したというもの。側近の前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)と共謀し、毎年の報酬約20億円の半分程度を退任後に受け取ることにして、50億円余りを隠したとされる。
調べに対し、ゴーン容疑者は「記載した場合の従業員の意欲低下を懸念した」と供述。退任後に受け取る計画を認めており、ケリー容疑者は「コンサルタント契約料などの名目で支払う予定だった」と説明している。
争点はどこにあるのか。一つは、退任後報酬に報告書への記載義務があったか否かだ。10年から記載が義務化されたのは、報酬1億円以上の役員名と、その金額。将来の支出でも、額が確定していれば記載すべきとされ、特捜部は退任後の支払いを確約した文書を入手し、逮捕に踏み切った。
これに対し、2人が「適法」とする主張の根幹は「支払額は決まっていなかった」というものだ。ゴーン容疑者は「将来の経済情勢がどうなっているのかは不透明だ」などと話し、「額は確定せず、記載義務はない」と訴えている。
違法性の認識の有無も争いになる。退任後報酬の文書は極秘扱いされており、特捜部は、認識があったとみているもようだが、ゴーン容疑者は弁護士でもあるケリー容疑者に「『適法に』と依頼し、合法と聞いた」と供述。ケリー容疑者は「金融庁や外部の法律家に意見を聞き、適切な処理をした」と主張している。
ゴーン容疑者の弁護人には元特捜部長の大鶴基成弁護士が、ケリー容疑者には、ロス疑惑で無罪を勝ち取った喜田村洋一弁護士が付き、それぞれチームを結成した。2人の身柄を拘束できる期限は10日。特捜部は直近3年間でも同様の手口で約30億円を隠したとみて捜査を進めている。
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