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そこは標高5800メートルぐらいの斜面。大きなターンで滑っていた私は、必死にエッジを立てて急ブレーキをかけました。前方に突然、大きなクレバスが現れたのです。何とかギリギリのところでスキーを止めて数秒後、妙な音がしました。ピッシ、ピッシ、ピシ、ピシ、ピシ…。氷が割れる音。それは氷を入れたグラスにウイスキーを入れた時に、パキパキと鳴る音にも似ていました。思わず振り返ると、私の背後5メートルほどのところに横長の亀裂が走っているではないですか。その長さは30メートルぐらいあったでしょうか。目の前の急斜面の下には深さが50メートル以上はありそうなクレバスが口を開けています。私が乗っていた氷の斜面がそのまま前方にずり落ちていけば、クレバスにのみ込まれて一巻の終わり。大きな振動を与えたら最後です。恐怖で頭の中は真っ白になり、身体は一瞬にして凍りつきました。絶体絶命のピンチ―。
赤道直下の高峰をスキー滑降する第3弾は、エクアドルのチンボラソ山が舞台。この山を思い返すと、真っ先に目に浮かぶのがこのシーンです。
〔写真〕チャレンジ前に滑った急斜面でのトレーニング!(1991年04月撮影) 【時事通信社】