大西洋を一気に横断する国際郵便路線を計画していたインペリアル航空のためにショート・ブラザーズ社が1937年に開発した親子機で、上側がS20マーキュリー、下側がS21メイアと命名された。航空機は離陸から巡航高度に達するまでに多くの燃料を消費し、それが航続性能に大きく影響することから、大型の飛行艇が子機を背負って出発し、途中で子機を発進させて航続距離を稼ぐという発想だった。S21は同じショート社のS23エンパイア飛行艇がベースで、全長25.9メートル、全幅34.8メートルと機体サイズは同程度、エンジンも同じ出力920馬力のブリストル・ペガサスXCエンジンを4基搭載した。S20は全長15.5メートル、全幅22.3メートル、エンジンは出力340馬力のネイピア・レイピアVIを4基搭載していた。
両機を組み合わせた初飛行は38年1月で、切り離しテストなどを繰り返してから、同年7月に大西洋横断飛行に乗り出した。出発地はアイルランド南西部のフォインズで、適正高度まで上昇した後に切り離されたS20は、出発から20時間20分後に4600キロ離れたカナダのモントリオールに到達した。同年10月にはスコットランド南部のダンディーから南アフリカのアレクサンダー湾まで9728キロを無着陸飛行し、親子機が長距離飛行に有効であることを証明した。しかし、翌年には第2次世界大戦が始まり、民間の長距離航空郵便事業を実現することはできなくなってしまった。両機はBOAC(インペリアル航空とブリティッシュ・エアウェイズを国策で合併して設立された航空会社)に引き取られたが、S21はドイツ軍の空襲で破壊され、S20は英国空軍で訓練機として使用された 【時事通信社】
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