JAIA2023 輸入車試乗リポート〔5〕

テスラ モデルY RWD

刺激的な走行体験こそ究極の魅力

 2022年6月に日本での受注がスタートしたテスラのミドルサイズSUV(スポーツ用多目的車)「モデルY」。脱炭素社会の実現に向け、欧州のプレミアムブランドや中国などのメーカーが、こぞって電気自動車(EV)シフトを鮮明にする中にあっても、イーロン・マスク氏率いるテスラの個性は際立っている。

 モデルYは、テスラの最量販セダン「モデル3」をベースとしており、外観もモデル3の背を高くして、全体的に少し大きくしたような印象だ。モーター1基で後輪を駆動する「RWD」と、前後にモーターを搭載する四輪駆動(4WD)の「パフォーマンス」がラインアップされており、今回はRWDに試乗した。

 ボディーサイズは、全長4751mm、全幅1921mm、全高1624mmで、ホイールベースは2890mm。ラージサイズのセダン「モデルS」やSUV「モデルX」と比較すると、日本国内でも日常生活でほぼストレスなく利用できる範囲内に収まっているのではないかと思う。

 車両はパールホワイトの塗装色が施されたモデル。全体のフォルムが丸みを帯びているせいか、遠目からは小柄に見えたが、近寄ると結構幅があり、堂々とした印象だ。

 グリルレスのフロント、ボディー格納式のドアハンドル、ウイングを含めたリアの形状など、テスラに共通するデザインはここでも踏襲されている。

 そして、ドアを開けると、テスラならではのインテリア風景が広がっているのもまた同じだ。ステアリングホイールと、コラムから生えた左右2本のレバー以外、操作系の類が見当たらない。否、正確にはあともう一つ、ステアリングホイールのスポークに埋め込まれた左右2つのスクロールボタンを除いて、と言うべきかもしれない。

 メーターパネルが存在しないダッシュボードの真ん中に、15インチのタッチ式スクリーンがでんと据え付けられ、ほとんどの操作がそこに集約されている。このシンプルさ、割り切りの良さは他ブランドにはないものだ。EVの斬新さを演出する効果も十分発揮していることは間違いない。

 室内空間は、SUVということもあってモデル3より格段に広く感じる。後席フロアはもちろんフラットで、足元には余裕があり、頭上スペースも確保されている。そして、前席から後席まで続く広大なガラスルーフが、すべての乗員に開放感を与えるつくりになっている点も特記すべきだろう。

 リアの荷室容量は854リットルで、後席を折り畳んだ場合は2041リッターまで拡大する。積載量という点でも突出しており、アウトドアやレジャーなど使い勝手は抜群だと思う。

 右側のコラムレバーがシフトになっている点はメルセデス・ベンツと同じだ。Dを選択すると、パーキングブレーキが自動的に解除され、アクセル操作で前進する。車両が動きだしてすぐに、1年前に試乗したモデル3の運転フィールがよみがえってきた。昔のドイツ車のような、とても堅牢(けんろう)な乗り物で移動している感覚だ。

 路面の段差やジョイントをものともしない。道路状況がどんなに変化しても、車体のねじれとは無縁だ。それほど剛性感は高い。荒れた路面であっても、ハイスピードのコーナーであっても、路面を圧するように走り抜けていく。この特長こそ、例の「ギガプレス」で生成された車体の最大の恩恵なのだろう。

 巨大な鋳造設備を使って、溶けたアルミ合金を圧力をかけて金型に流し込み、車体の一部を一体成型する手法だ。それによって生み出されたリアとフロントで、モデルYは構成されている。だから、車体剛性は傑出しており、強い入力を受けてもきしみ音ひとつ立てない。

 そして、爆発的な加速力こそ、テスラのテスラたるゆえんだろう。アクセルを踏めば、初速から体は座席の背面に押し付けられる。重めに調律されたステアリングホイールは微動だにせず、猛ダッシュでも車両の挙動が乱れることはない。しかも車内は想像以上に静かだ。

 テスラは、モーターの低回転域から最大トルクを発生するEVの特性をストレートに表現することが、自らのプロダクツの価値だと位置付けているのだろう。

 RWDのモーターは最高出力220kW、最大トルク350Nmを発揮。0~100km/h加速は6.9秒、最高速度は217km/hと公表されている。エンジンを搭載するポルシェのSUV「マカン」とほぼ同等の動力性能を持つ。

 4WDのパフォーマンスになると0~100km/h加速3.7秒、最高速度250km/hと発表されており、それはもうスポーツカー並みの速さである。

 加速モードはタッチスクリーンで2段階に調節できる。RWDの場合は「チル」を選択すれば、加速が制限され、「スタンダード」を選べば、強い加速と回生を体感できる。車両重量はRWDが1930kg、パフォーマンスが2000kgあるが、航続距離は前者が507km、後者が595kmとなっている。

 テスラによると、2022年は世界で131万台が納車され、このうちモデル3とモデルYで124万台を占めている。また、急速充電器「スーパーチャージャー」のネットワーク拡充にも力を入れており、日本国内でも設置箇所は約60カ所に上っている。

 オンラインでの車両購入やインターネットを介したソフトウエアのアップデートによる機能改善など、テスラのサービスは斬新さが豊富だが、ドライバーにとっては、車両自体の革新性とそれがもたらす非日常的な体験、端的にいえば刺激的な走行体験こそが究極の魅力だと思う。それに共感するならば、もはや他を選択する余地はないだろう。

 モデル3とモデルYの国内販売価格は2023年1月6日に改定され、いずれも値下げされた。試乗したモデルYのRWDは車両本体価格が579万9000円。

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