捲土重来、日本仕様車とネット販売で勝負
「テスラの牙城、危うし」―。韓国・現代自動車(ヒョンデ)の電気自動車(EV)「IONIQ(アイオニック)5」を降りた後の率直な感想だ。「走り」「性能」「デザイン」「価格」、EV界の王者テスラを狙うには十分。テスラは今年に入り、主力車種「モデルY」「モデル3」の大幅な値下げに踏み切ったが、アイオニック5との勝負が楽しみになってきた。
アイオニック5は、2021年の世界発売以来、「ワールドカーオブザイヤー」「ワールドEVオブザイヤー」「ワールドカーデザインオブザイヤー」など数々の名だたる賞を獲得。日本でも22年に販売を開始し、アジアのメーカーとして初めて、「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」の栄冠に輝いた。
かつてヒョンデは、日本国内で乗用車部門の営業展開をしていたが、販売不振から09年12月に撤退。約12年が経過し、人気のアイオニック5が捲土重来(けんどちょうらい)を期す急先鋒の役割を担い再上陸を果たした。同社は営業の実店舗を設けず、ネットのみでの販売に挑む。発売から1年に満たないが、都内のさまざまな場所でその姿を見かけるようになった。
アイオニック5のグレードは4種類用意される。最高出力170PS、航続距離498km(WLTCモード)の「ベースモデル」、出力がベースモデル比で47PS高く、航続距離が120km長い「ヴォヤージュ」、ヴォヤージュの装備が充実した「ラウンジ」、四輪駆動で305PSを発揮する最上級モデル「ラウンジAWD」。特別装備を施した日本向けモデルは、韓国の蔚山(ウルサン)工場で生産される。
今回試乗したのは、日本で最も人気があるラウンジAWD。2基のモーターが搭載され、最大トルクはスーパーカー並みの605Nmを発揮し、航続距離は577kmに及ぶ。リチウムイオンバッテリーの総電力量は72.6kWhで、総電圧は653V。90kWの急速充電器を利用した場合は約30分で電池容量80%に達する。
駐車場に他社の試乗車が並ぶ中、アイオニック5は異彩を放っていた。フロントマスクとリア部分で、デジタル画像の最小単位「ピクセル」をモチーフにした正方形が組み合わされ、近未来感が際立つ。アナログ的な要素もあり、ボディー各所にあしらわれた直線は、20世紀前半に流行したデザイン様式「アール・デコ」のような美しさを持つ。
車内はかなり広い。同社は居住性を高めるため、リビングルームを目指したという。室内長はトヨタの高級ミニバン「アルファード」と同等の300cm。ホイールベースが長いEV専用プラットフォームにより、シートを倒せば大人2人が寝られるフラットなスペースになり、「車内泊もできると利用者から評判が高い」と広報担当者。大型のガラスルーフから陽光が注ぎ込む車内は、本当にリビングルームのように快適だ。
ステアリングの右奥に設けられたシフトセレクターを回し、ドライブモードをノーマルにセットして駐車場を出た。フロントウインドーが大きく、座席位置が高いので、視認性は良好だ。アクセルワークはEVらしく応答性が高く、軽く踏んだだけで力強いトルク感が湧き出てきた。
一般道に出る時、さっそく日本向けの特別仕様を試してみた。一般的に左ハンドルを右ハンドルにした外国車は、ステアリングの左側にウインカーレバーがあるのだが、日本車同様、右側にある。日本車からのスムーズな乗り換えを狙ったものだが、誤ってワイパーを動かすことがなく方向指示ができて、確かに便利だ。一度、辛酸をなめている同社だからこそできる、きめ細かい対応だろう。
高速道路に入り、四輪駆動になるスポーツモードにダイヤルを合わせ、アクセルを強く踏み込んでみた。ノーマルモードと比べ、パワーの出現が早い。ボンネットが浮き上がり、ターボが効き始めたスポーツ車のように「ドカン」と加速する。
回生ブレーキはパドルシフトで強弱が選べ、全く効かない状態から、完全に停止できる状態までレベルは5段階。ワンペダル走行できる回生力が最も強い「iSTOP」にすると荒馬に乗っているような感覚になった。アクセルを踏み込むと鋭い加速、離すと強力なブレーキ。サーキットならば、きっと楽しい走行ができるだろう。なお、ドライブモードには、ノーマルよりもアクセルのレスポンスやトルク出力がソフトな「エコ」も用意されているが、それでも街乗りには十分すぎるパワーとなっている。
アイオニック5の販売はネットのみで、ディーラーでの購入に慣れた人には違和感があるかもしれないが、広報担当によると、「ディーラーに行くのが煩わしいというお客様が一定数いて、間口を広げた販売にチャレンジした」という。納車の拠点となるデリバリーセンターは横浜、東京・丸の内、名古屋、京都、福岡、沖縄の全国6カ所。希望の場所での受け取りも全国一律5万5000円で対応している。購入後、最も気になるのは車両の保守だが、直営の整備拠点が1カ所と協力整備工場が42カ所あり、サポート体制も整っている。
アイオニック5は安全性能も充実しており、災害時に車を外部電源として利用できる機能も備える。なかなか珍しい前方シートのオットマンは、個人的に気に入った快適装備だ。試乗したラウンジAWDの車両本体価格は589万円。アイオニック5は韓国で高い人気を誇り、何カ月間も待ちがあるというが、日本向けは別に生産台数を確保しているため、仕様にもよるが概ね1~2カ月で納車できる体制という。
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