経験のビックカメラ高崎と若さのトヨタ、2年ぶり決戦へ〔ソフトボールJDリーグ〕
2023年11月18日22時03分
ソフトボールのニトリJDリーグ2季目の日本一を決めるダイヤモンドシリーズは18日、埼玉・朝霞中央公園野球場で準決勝2試合が行われ、連覇を狙うビックカメラ高崎(東地区優勝)とトヨタ(西地区優勝)が19日の決勝へ進んだ。両チームによる決勝は日本リーグ時代の2021年以来2季ぶりで、ビックカメラ高崎は日本リーグから通算5連覇、トヨタは5季ぶりの優勝を目指す。
ビックカメラ高崎、連覇に王手 決勝でトヨタと対戦―ソフトボール女子
◇ビック打線、内藤の3ランから大量点
準決勝は東西優勝チームと先週のプレーオフを勝ち抜いたチームの対戦。第1試合はビックカメラ高崎がホンダ(東地区3位)を12-5で、第2試合はトヨタが豊田自動織機(西地区2位)を3-0で、それぞれ下した。
ビックカメラ高崎は一回に内藤実穂の先制3ランで主導権を握ると、三回には先発ジェイリン・フォードから代わった米国のエース、アリー・カーダから4安打で3点。五回には市口侑果の3ランなどで4点を挙げ、大量リードを奪ったが、圧勝の中で投手陣が決勝へ不安を残した。
先発・浜村ゆかりは一回を3人で片付けながら、二回2死から下位打線に2長短打で1点を失う。三回は1四球の走者だけに抑え、その裏に打線がリードを5点と広げたところで、岩渕有美監督は四回から上野由岐子にスイッチした。
勝ちパターンの継投だが、四回は早い。「浜村の状態や相性などいろんなことを考えて早めにした」という。レギュラーシーズンで対ホンダ3戦3敗のデータを分析したのは当然としても、「浜村の状態」はどうなのか。上野も早めの継投を「ある程度」予想していたという。
◇上野「お手上げ」、まさかの乱調
その上野はもっと苦しい投球だった。四回に3四球1暴投で招いたピンチは0点でしのいだが、五回以降もボールに力が伝わらない感じで、毎回の4失点を喫し、計4イニングで7安打5四球、3暴投。106球を費やした。
岩渕監督は「マウンドが合わなかったようだ」と話したが、上野自身は「自分が全然ボールを投げられなかった。グラウンドのせいではないので」という。仕草から体の使い方がしっくりいかない感じも見え、そのことを否定はしなかった。
高度な修正能力も発揮できず、「何をやってもうまく投げられなかった。きょうはお手上げ」「本来ならだいたい合わせられるけど、きょうは全くできなかった感じです」と、むしろさばさばした様子で振り返った。
レギュラーシーズン29試合を戦って地区優勝しても、日本一を決するのはトーナメントの2試合。ビックカメラ高崎の部長でもある日本代表の宇津木麗華監督は試合前、こんな話をした。
「どんな選手でも『その日』に好調とは限らない。例えばオリンピックの決勝でも。だから私は試合で調子のいい選手はあまり気にしない。調子の悪い選手がどう考えてどうするかを見ている」
短期決戦やトーナメントは好調な選手を使うのがセオリーだが、大勝負を任せられる選手はビックカメラ高崎といえども限られている。特に投手はなおさら。上野が投げられなかった昨季は準決勝、決勝とも浜村が完投した。果たして今季の決勝は-。
◇トヨタ打線も本塁打で先手
トヨタは競り合うと苦しめられる豊田自動織機から、本塁打2本で先手を取った。二回に西地区本塁打王(9本)の下山絵理が左中間へ、2死後には切石結女が左越えに。ともに豪快な当たりだった。
続く三回には西地区首位打者・石川恭子が走りながら打つスラップショットで出ると、主将の鎌田優希が左前打で続く。強打者の原田のどかがしっかり送り、4番バッバ・二クルスの適時打で1点を加えた。各自が役割を果たす手本のような得点パターンだった。
馬場幸子監督は先発投手にメーガン・ファライモを立てた。19年∪19ワールドカップ決勝で後藤希友と投げ合った優勝投手で、昨年の日米対抗でも投げた米国の次期エース候補。今年大学を卒業して後半戦からトヨタに加入し、4試合3勝、無失点だった。まだJDリーグの経験は浅いとはいえ、「彼女はファイターなので」と大勝負での気迫を買ったという。
期待通り右腕からの力強い球を投げ込んだが、三回まで毎回走者を出し4安打2四死球。3-0とはいえ、早い回に1点でも返されると豊田自動織機はしぶとい。四回から後藤希を送り、六回まで無難に抑えた。
◇冷静だった後藤希、昨季の「再現」許さず
その後藤希も七回に勝ちを意識したか2四球で2死二、三塁のピンチを迎える。一発出れば同点。打者の大平あいには昨季の準決勝で、延長八回に決勝本塁打を打たれている。快勝かと思われた試合でも、時に勝負の神様はこんな場面をつくる。
しかし、後藤希は冷静だった。「去年は悔しい思いをしたけど、それは置いておいて、自分に余裕を持ちたかったので、ホームランを打たれても同点だし、四球でもいいと思って」。二ゴロに打ち取り、いよいよ決勝でビックカメラ高崎に挑む権利を得た。
JDリーグは東西制のため、両チームはこの2年間、交流戦の2試合しか対戦していない。全日本総合選手権でも昨年は当たらず、今年はともに決勝へ進みながら悪天候で大会が打ち切られている。
この間に世代交代や移籍はあったが、モニカ・アボット、峰幸代、山崎早紀、渥美万奈らバッテリーと攻守の中心選手が引退したトヨタの方が、入れ替わりは大きい。
攻撃力はほぼ互角と見える。違いはビックカメラ高崎の経験とトヨタの若さ。この日の内容を見る限り、投手陣の出来と継投が大きなカギを握りそうだ。
トヨタ投手陣をリードする切石は「若いチームなので、去年はやってやろうという気持ちがグラウンドで出せなかったりしたけど、今年はプレーに出ている」と手応えを語り、迎え撃つ上野は「プライドや執念やいろんなものがぶつかり合う試合になるんじゃないのかなと思う」と話した。
19日も同球場で、午後1時からの決勝を前に、プレーオフに進めなかったチームから期待の若手を選抜した東西戦が午前10時から行われる。(時事通信社 若林哲治)