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米中首脳、「緊張緩和」を演出 対立先送りもくすぶる火種―外交・経済、難題対処を優先

2023年11月16日20時15分

15日、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で、会談を終えて握手するバイデン米大統領(左)と習近平中国国家主席(EPA時事)

15日、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で、会談を終えて握手するバイデン米大統領(左)と習近平中国国家主席(EPA時事)

  • 15日、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で記者会見するバイデン米大統領(AFP時事)

 バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は1年ぶりの会談で、偶発的衝突の回避を図る軍高官の対話再開にこぎ着けた。だが、台湾問題などの懸案で大きな進展はなく、対立の火種は残る。一時的な「緊張緩和」を演出した両首脳からは、自国が抱える難題への対処を優先させたい思惑が透けて見える。
 ◇「厚遇」の再会談
 バイデン政権下で2度目となった米中首脳会談は、各国の首脳や政府高官が続々と集まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催地サンフランシスコではなく、その中心部から南に約40キロ離れ、自然に囲まれた歴史ある邸宅を舞台に行われた。
 バイデン、習両氏は少人数でのワーキングランチを終えた後、広大な庭園を眺めながら2人で散策した。記者団から会談の様子を聞かれたバイデン氏は、両手の親指を立てて「上々だ」と返し、習氏も片手を上げて親密さを演出。習氏が会談場を後にする際も、2人は笑顔で別れのあいさつを交わした。
 ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突勃発に伴い、バイデン政権は二つの危機への同時対処を迫られている。再選を目指す米大統領選まで1年を切り、対中関係がさらに悪化して「3正面」に対処する事態は避けたいのが本音。習氏の「厚遇」には、少しでも緊張緩和を図りたいバイデン氏の「焦り」が見え隠れする。

 ◇巨大市場をアピール
 「われわれは永遠に覇権を唱えず、いかなる国とも冷戦や熱戦を行わない」「中国は国連を核とする国際体制、国際法に基づく秩序を堅持する」。習氏は首脳会談を終えた15日夜、サンフランシスコ市内での夕食会に出席し、集まった米企業トップを前にこう断言した。
 米中関係の悪化が進み、国内でも習政権が強権的な姿勢を強める中、外資の「中国離れ」が加速。各国企業関係者の間で、中国経済の先行きに対する懸念は強まっている。習氏は夕食会で14億の人口を抱える巨大市場の魅力を訴え、対中投資への警戒感払拭に努めた。
 習氏が直面する最重要課題は、国内経済の立て直しだ。米企業の対中投資が戻れば、他国の企業が追随する可能性も高まる。対米関係の安定化は、経済再建を目指す習氏にとっても避けて通れない道だった。
 ただ、こうした中国側の動きを「国内の課題に集中するための短期的な戦術的決断」(元米高官)と受け止める見方は、米側に少なくない。来年1月に台湾総統選、同年11月に米大統領選を控え、バイデン、習両氏が米中関係のコントロールを誤れば、くすぶり続ける火種は再び燃え上がりかねない。(サンフランシスコ時事)

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