「アト秒パルス」開発の米欧3氏に 電子の動き捉える手法―ノーベル物理学賞
2023年10月03日21時13分
スウェーデン王立科学アカデミーは3日、2023年のノーベル物理学賞を、「アト秒パルス」(アトは100京分の1の単位)と呼ばれる持続時間が極めて短い光のパルスを発生させ、物質中の電子の動きなどを捉える実験手法を開発した米オハイオ州立大のピエール・アゴスティーニ名誉教授、独マックスプランク量子光学研究所のフェレンツ・クラウス博士、スウェーデン・ルンド大のアンヌ・ルイリエ教授の3氏に授与すると発表した。
ルイリエ氏は1987年、赤外レーザー光を希ガスに集光する実験で、はるかに短い波長の光が発生する現象を発見。ごく短いパルスを発生させる技術の基礎を築いた。
アゴスティーニ氏とクラウス氏はそれぞれ01年、数百アト秒の光パルスの生成と観測に初めて成功。このパルスをカメラのフラッシュのように使うことで、従来は速過ぎて捉えられなかった電子の動きを「止めて」見ることができるようになった。
半導体や超伝導物質の機能解明、分子の同定など、幅広い領域での応用が期待できるといい、選考委員会は「原子や分子内の電子の世界を探究するための新たな手段を人類に与えた」と高く評価した。
授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれる。賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億5000万円)は3等分で贈られる。