「中距離打者」だったイメージ 大谷を語る日本ハムの山田顧問
2023年10月02日19時19分
今や米大リーグを代表する強打者となったエンゼルスの大谷だが、かつての評価は少し違った。「パワーヒッターじゃない。中距離打者になれるだろうという思いだった」。そう話すのは日本ハムの山田正雄スカウト顧問(79)。ゼネラルマネジャーだった2012年のドラフトで、大リーグに挑戦する意向を示していた大谷を指名し、獲得につなげた一人だ。
岩手・花巻東高在学時の大谷を視察した時、想像した将来の姿は巨人で活躍した高橋由伸だった。日本ハム入団直後もそのイメージのままで、「ある評論家と『やっぱり中距離打者だ』と話したことも覚えている」。非凡さを持っているのは確かだったが体は細く、現在の姿は思い浮かばなかった。
入団2年目の頃に考えが変わった。千葉県鎌ケ谷市の2軍施設で、驚くほどの負荷をかけてウエートトレーニングをする姿を見た。「そのうちにパワーがつくだろうなと。その頃から、もしかしたら遠くへ飛ばせる打者になるのではという期待感があった」。プロ4年目には投手として10勝を挙げる一方、22本塁打をマーク。メジャーでも毎年のように進化を遂げ、誰もが認める長距離砲になった。
長くスカウトを務め、何人もの選手を見極めてきた山田さんは、単なる野球の能力にとどまらない大谷の素質に目を見張った。「もっと打ちたい、投げたいという欲。才能にプラスしてそういうものが人一倍ある」。米球界入りを翻意させた経緯もあるだけに、今の活躍は「スカウト冥利(みょうり)に尽きる」と実感を込める。
シーズン終了前に右肘を手術した大谷について、山田さんは「絶対に乗り越えてくる。また二刀流で復活するという夢をかなえてくれる」。10代からの驚くべき成長を見てきたからこそ、確信している。