mRNAワクチン技術の2氏 早期実用化、新型コロナに効果―ノーベル生理学・医学賞
2023年10月02日20時35分
スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン開発につながる基礎技術を開発したハンガリー・セゲド大のカタリン・カリコ教授(68)と、米ペンシルベニア大のドリュー・ワイスマン教授(64)に授与すると発表した。この技術を用いて新型コロナウイルスワクチンが作られ、世界中で接種が進められている。
mRNA技術、多彩な用途 がん治療薬研究も―専門家「可能性は無限」・ノーベル賞
遺伝情報を記録したmRNAは、細胞内でたんぱく質を作る。人工的に複製したmRNAを細胞に取り込ませれば、狙ったたんぱく質を作れることは分かっており、ワクチンなどへの応用が期待されていた。ただ、激しい炎症反応を引き起こすため、実用化は難しいと考えられてきた。
カリコ氏らは、たんぱく質の合成過程で働く別のRNA(tRNA)が炎症を引き起こさないことに着目。05年、「ウリジン」と呼ばれるmRNAを構成する物質の一部を、tRNAの「シュードウリジン」に置き換えて炎症を抑えることに成功し、ワクチン実用化への道筋を付けた。
新型コロナワクチンは、ウイルスが細胞に侵入する際に用いる、突起部分の遺伝情報を調べてmRNAを複製し、脂質粒子に包んで接種する。細胞に取り込まれると、突起部分のたんぱく質が作られ、免疫ができる仕組みだ。mRNA自体は体内で分解されやすく、安全性も高いとされる。
従来のワクチンと異なり、ウイルス本体を増やして不活化したり、弱毒化したりする必要がない。変異に対しても、短期間で対応したワクチンを製造することができる。
こうした技術を使い、カリコ氏が顧問を務める独ベンチャー「ビオンテック」は、米ファイザーと共同で新型コロナワクチンを開発。米モデルナ製も同様の技術を使っており、迅速なワクチン開発、普及に貢献した。