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大谷はリアルな「少年漫画」 閉塞感破る痛快さ―社会学の常見陽平准教授に聞く

2023年10月02日16時51分

千葉商科大の常見陽平准教授

千葉商科大の常見陽平准教授

  • 今季最終戦のアスレチックス戦、ベンチでチームメートと談笑するエンゼルスの大谷(中央右)=1日、アナハイム

 多様な価値観が尊重されるようになった現代で、なぜこれほどまでに注目を集め、人気が高いのか。米大リーグで日本勢初の本塁打王に輝いた大谷翔平選手の魅力は、実績だけでは説明できない面もある。世代論に詳しい千葉商科大の常見陽平准教授(49)=労働社会学=に聞いた。

大谷の進化、感じ取った対戦相手 苦手なゾーン減り、速球に強さ―米大リーグ

 ◇強さのインフレ
 計り知れない強さがある。常見さんは、大谷のたたずまいを「リアル少年漫画」と表現する。人気漫画「ドラゴンボール」の主人公、孫悟空を引き合いに「既に強いのに、さらに強くなる。存在自体がわくわくする」と言う。160キロ台の速球を投げ、バットを持てば本塁打を量産する二刀流。「そんなのないだろう、という痛快感がある。ヒーロー漫画のような『強さのインフレ』に魅入られる」と話す。
 常見さんは現在までの大谷の歩みにも着目している。岩手・花巻東高在学時からメジャー挑戦の目標を掲げ、プロ入り後も二刀流を貫いた。プレーのために食事など生活を律する姿も知られる。「外車に乗り、銀座で飲み歩くのでもなく、野球への純粋な愛を感じる」。二刀流へのこだわりの強さは、1990年代半ば以降生まれの「Z世代」にも響くとみている。情報や娯楽があふれる中、物事に対する関心や取り組みを一つに絞らない傾向があり、「何でもやりたいと思う彼らに合致する。(大谷の)ストイックさも含め、彼らを非常に刺激するはず」と言う。
 ◇日本社会の逆襲物語
 日本代表の世界一奪還に貢献した3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、ナインを前に大谷が口にしたメッセージが話題を呼んだ。スターぞろいの米国代表との決勝を前に語り掛けたのが、「憧れるのはやめましょう」との言葉だった。常見さんは「SNSのような短いフレーズで、年代を問わず響く。ビジネスに置き換えても、外資や大企業に立ち向かう人たちを鼓舞する」と考える。
 低成長や国際競争力の低下が指摘されて久しい国内。大谷の存在は、この数十年の停滞感が拭えない日本社会の「逆襲物語」と捉えることもできるという。
 「社会に閉塞(へいそく)感があるから、規格外の大谷に憧れる。彼のように活躍するにはどうすればいいか考えれば、世の中は少し明るくなる」と常見さん。道を切り開き、限界を超えようとする大谷の姿に、多くの人が引き付けられている。

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