打球速度に進化の跡 大谷、逆方向のアーチ増加―米大リーグ・本塁打王
2023年10月02日15時30分
米大リーグで日本選手初の本塁打王に輝いたエンゼルスの大谷の打撃について、野球のデータや動作を解析する「ネクストベース」(本社東京)の森本崚太アナリストに分析してもらった。
本塁打王の大谷、速球への対応力増す ストライクゾーン「征服」―米アナリスト
森本氏は、まず打球速度に着目した。今季の全打球の平均は自身最速の152キロ。「筋肉量が多くてスイングが速く、球に力を伝えるのもうまい証し。圧倒的な能力を感じる」と話す。
今季の本塁打の打球方向には変化が表れている。センターを基準の0とすると、46本を放った2021年は右に14.6と引っ張り傾向が強い。今季は7.6で中堅に近づいた。対左投手からの本塁打も特徴的。21年は引っ張りがほとんどだが、今季は逆方向がかなり多い。
これに関係するのが、直球に対する打率だ。21年は2割5分3厘だったが、今年は4割2厘と向上。森本氏は「差し込まれなくなった。以前は中速の変化球を引っ張っていたが、今年は直球がファウルにならず、広角に仕留められている」と説く。
本塁打など長打の出やすい速度と角度を組み合わせた指標の「バレル」も、割合、回数とも最上位クラス。「実は平均飛距離は長くない。打球が常に速いので、いい角度になればバレルになる」と解説した。
これまでの大谷は、本塁打が多い年は三振も多い傾向があった。ところが三振と内野フライを合算した「完全アウト率」は、21年の32.6%に対し、今年は27.7%と減少している。「角度を出すためバットを球の下に入れようとすると、普通は空振りが増える。今年は進化している」と森本氏はみている。
8月の右肘負傷の前と後では、打球速度の平均が152.7キロから140.4キロに、角度は13.5度から8.4度に落ちた。森本氏は「(9月に負傷した)脇腹も含めて心配だが、来季も衝撃的な活躍をしてほしい」と期待した。