ウクライナ支援疲れ鮮明 東欧、渦巻く不満
2023年10月02日07時04分
【ベルリン時事】ロシアの侵攻を受けるウクライナを最も近くから支えてきた東欧諸国で、「支援疲れ」が鮮明になってきた。9月30日のスロバキア総選挙ではウクライナへの軍事支援停止を掲げる左派政党「スメル(道標)」が第1党を確実にし、選挙を2週間後に控えるポーランドの首相も「もう武器を送らない」と有権者の顔色をうかがう。物価高を背景に生活苦にあえぐ市民の批判の矛先が、長期化するウクライナ支援に向けられている。
ロシア寄り左派第1党 ウクライナ支援暗雲、連立協議へ―スロバキア総選挙
「戦争はいつも西側からもたらされ、自由と平和はいつも東側から来る」。スメルを率いるフィツォ元首相は、選挙戦でロシア寄りの姿勢を打ち出して支持を得た。資源をロシアに全面依存してきたスロバキアはウクライナ侵攻後、深刻なエネルギー不足に陥り、今年7月まで2桁の高インフレが続いた。
ロシアは欧州向けの天然ガス供給を制限。黒海を封鎖し、ウクライナ産穀物の「出口」を東欧経由での輸送に切り替えさせた。これが世界的な物価高を招き、経済基盤の弱い東欧諸国の市民生活を直撃。一方で安価なウクライナ産穀物の流入も地元農家らを圧迫し、支援疲れにつながっている。
ウクライナや西側諸国に不利な偽情報も飛び交っている。欧州連合(EU)の支援を受けてネット空間を監視するプロジェクト「中欧デジタルメディア観測所」によると、スロバキアでは「ゼレンスキー大統領が戒厳令を延長してウクライナの選挙を妨害した」などのデマが流布。7月にスロバキアやチェコで行ったアンケートでは、選挙に介入してくる可能性がある国として、ロシアよりもEUや米国を挙げる回答者が多かった。
ドイツでも、旧東独地域を中心に極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を広げている。ロシアの占領地奪回に向けた反転攻勢に出るウクライナ軍にとっては西側諸国の支援が頼みの綱だが、こうした支援に懐疑的な勢力が着実に発言力を増している。