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インボイス制度、今後の展望は 1日導入、識者に聞く(1)

2023年10月01日15時39分

酒井克彦 中央大法科大学院教授(本人提供)

酒井克彦 中央大法科大学院教授(本人提供)

 インボイス(適格請求書)制度が1日から始まった。事務負担の増大が懸念されるほか、小規模事業者の一部からは取引が不当に打ち切られるのではないかという不安も広がる。制度導入の影響や展望について、中央大法科大学院の酒井克彦教授(租税法)とプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉代表理事に話を聞いた。

<(2)を読む>

 

◇「自律的社会」の契機に=酒井克彦氏
 ―インボイス導入の意義は。
 売り手と買い手双方が税額や税率をチェックできるため、不正のしにくい「自律的社会」に移行する契機になる。これまでは税務署の税務調査で取引の適正性が担保されていたが、税務調査に使われる行政資源の節約や効率的な配分も可能になる。
 消費税の納税が免除されている免税事業者の一定数は、(インボイスが発行できず)取引から排除されることを恐れ、課税事業者に転換する。消費税相当額を価格転嫁していた免税事業者がいるとすれば、(納税せずに手元に残る)「益税」の解消にもつながる。
 ―政府は制度定着に向け、どのように取り組むべきか。
 政府の広報は手続きや期限の周知ばかりに固執している。制度の意義や目指すべき将来像が国民に届いていないのではないか。現実に起こり得る問題の対策が用意されていないケースもある。
 導入をきっかけに立場の強い事業者が取引相手に「消費税分を値下げしろ」などと圧力をかける可能性がある。政府はこうした行為が違法と十分に周知できているのか。国税当局と公正取引委員会のさらなる連携も求められる。
 ―今後の展望は。
 インボイスの電子化が今後数年で進むだろう。実現すれば、紙の保存や検算などが不要になり、事務負担が軽くなる。ミスや不正を減らすだけでなく、人件費削減にも役立つ。ただ、中小・零細業者の電子化には時間がかかるかもしれない。

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