東日本大震災の被災地から学ぶ インドネシアの住民ら―スラウェシ地震から5年・宮城
2023年10月02日07時01分
インドネシアの中部スラウェシ島で約5000人が死亡もしくは行方不明となった地震から先月下旬、5年が経過した。中でも津波や土砂崩れに見舞われるなどして、甚大な被害を受けた中スラウェシ州の州都パル市は、今でも東日本大震災で被災した宮城県岩沼市と交流し、まちづくりのノウハウなどを学んでいる。
「パル市にはない取り組みばかりだ」。岩沼市の玉浦西地区の集会所で9月27日に行われた研修会には、パル市の職員や自治会長ら5人が参加し、岩沼市職員や住民の説明に熱心に耳を傾けた。
岩沼市は東日本大震災で東部のほぼ全域が浸水。沿岸の6地区で暮らしていた住民約1000人が現在の玉浦西地区に集団移転した。
市の担当者は「震災前のコミュニティーを維持することを重視し、避難所だけでなく、仮設住宅も地区ごとに設定した」と紹介。「気心の知れた住民同士が集まるようにしたことで、その後の集団移転が円滑に進んだ」と話した。
住民らも「人と人とのつながりがないといい町にならない」と積極的に企画した花見や夏祭りなどの様子を、写真やパネルなどを使って説明した。
パル市の集団移転先の自治会長、ワワンさん(47)は「われわれはくじ引きで住む場所を決めたせいか、住民同士の交流が少ない。ここで学んだことを生かし、まずは畑を活用した農業コミュニティーづくりに努めたい」と抱負を語った。
宮城県東松島市の職員川口貴史さん(47)も地震発生から間もない2019年2月と12月、東日本大震災で得た知見を伝えるために、市職員としてパル市を訪れたことがある。
集団移転先は住民の意向を聞き取った上で決めた方が良いと助言したといい、「さまざまな国から支援を受けてきたので、われわれの取り組みを伝えることで恩返しできればという気持ちだった」と振り返った。