米議会、苦渋の自国優先 ウクライナ支援、岐路に
2023年10月02日07時02分
【ワシントン時事】米連邦議会は土壇場でつなぎ予算案を可決し、政府閉鎖を回避した。与党民主党は「国民の勝利」(下院執行部)と誇ったが、共和党の一部が反対した対ウクライナ支援は抜け落ち、少数の強硬右派の主張を通した形に。来年11月に大統領選を控え、党派対立の一層の激化が見込まれる中、今後の支援の行方に不透明感が漂う。
◇強硬派が壁
「ウクライナは米国の51番目の州ではない。米国第一!」。トランプ前大統領に近く、ロシア寄りの姿勢で知られる共和党強硬右派のグリーン下院議員は9月30日、SNSでこう勝ち誇った。
国防総省は採決直前まで「ウクライナの戦闘能力に深刻な混乱をもたらす」と議会を説得し続けた。だが共和党が提出したつなぎ予算案の柱は災害支援など。自国民の生活か、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの援助か―。再選を目指すバイデン大統領や民主党には事実上、選択肢はなかった。
そもそも予算案の審議がこじれたのは、下院で多数派を握る共和党内の路線対立が原因だ。現在の下院議席数は共和221、民主212と僅差で、わずか5人の造反で共和党執行部は法案を通せなくなる。キャスチングボートを握った強硬右派は歳出の大幅削減を求め、マッカーシー議長率いる執行部と激しく対立していた。
事態がこう着し、政府閉鎖が数時間後に迫る中、とうとう少数派の民主党が賛成に回った。下院民主トップのジェフリーズ院内総務はつなぎ予算案可決後、記者会見で「議会をハイジャックしようとした極右の敗北だ」と述べ、理解を求めた。
◇揺らぐ支援継続
一方この日、上院では「打倒ロシア」の団結に変化の兆しがあった。米メディアによると、外交タカ派でウクライナ支援の方針を曲げない共和党トップのマコネル院内総務に、同党執行部から反発が相次いだ。こうした声を受け、共和党はウクライナ支援を盛り込んだ上院独自のつなぎ予算案の審議継続を断念した。
今回はあくまで11月半ばまでのつなぎ予算にすぎず、2024会計年度の本予算を巡る攻防はこれから本格化する。議会は来週以降、別途ウクライナ支援に関して協議するとみられるが、国民の「支援疲れ」を感じ取るマッカーシー氏は「米国を最優先する」と支援への態度を保留した。「自国第一」と「民主主義の盟主」との岐路で、バイデン大統領や民主党の手綱さばきが問われることになる。