岸田首相「解散風」沈静化が狙いか 与野党に疑念くすぶる
2023年09月30日07時02分
岸田文雄首相は29日、臨時国会を来月20日に召集し、経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案を提出すると明言した。これらの日程を曖昧にしてきたことで、衆院解散・総選挙の観測が加速したため、沈静化を図ったとみられる。ただ、一度吹き始めた「解散風」は当分やみそうにない。
臨時国会、来月20日召集 岸田首相、補正提出を表明―衆院解散の判断焦点
首相は29日、公明党の山口那津男代表と首相官邸で昼食を共にし、政権運営について協議。続いて自民党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長を呼び、国会日程を話し合った。相次ぐ「重量級」の会談に、与野党から「やはり解散はあり得る」(国民民主党幹部)との声が漏れた。
永田町で解散風が強まったのは、臨時国会の召集と補正予算案の提出について、首相が時期を明示してこなかったのが最大の要因。補正予算案の提出を先送りし、臨時国会の冒頭で解散に踏み切ると受け止められたためだ。
首相は29日、臨時国会の召集について「10月20日で調整したい」と与党に伝達。その後、記者団に「補正予算案を臨時国会に提出したい」と強調した。自民関係者は、首相の狙いについて「解散の可能性を薄めようとしたのだろう」と語った。
もっとも、与野党には疑念がくすぶったままだ。「解散についてはうそをついてもいい」というのが政界の不文律。10月にまとめる経済対策の柱として、首相が「減税」を打ち出したことも、「衆院選の目玉公約にしようとしている」(自民関係者)との見方につながっている。
首相が政権浮揚に躍起と映ることも臆測に拍車をかける。26日に経済対策の策定を指示し、27日に認知症対策の推進会議を初開催。28日は物流業界の「2024年問題」で緊急対策の取りまとめを表明した。
29日の首相発言を受け、与野党の間では「11月中下旬の補正提出前の解散は遠のいた」(自民ベテラン)との見方が広がる。その一方で、自民党の閣僚経験者は「臨時国会中の解散を首相はなお探っている」と指摘。「地元には選挙準備を指示した」と打ち明けた。
しかし、解散のハードルは低くない。試金石となるのが10月22日投開票の衆参補欠選挙だ。いずれも接戦が予想され、首相周辺は「2敗すれば解散どころではなくなる」と身構える。
補選を乗り切っても、立憲民主党などは新閣僚の「政治とカネ」の問題や、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を、国会審議で徹底追及する構え。疑惑が深まれば、低迷する内閣支持率のさらなる下落を招く可能性もある。