ウクライナ4州、占領の既成事実化進む ロシアが「地方選」強行―30日「併合」1年
2023年09月30日07時11分
ロシアのプーチン大統領が昨年9月、侵攻したウクライナ東・南部4州の「併合条約」に調印して30日で1年。4州では今月、「ロシア統一地方選」が強行され、親ロシア派の「知事・首長」が形式上誕生した。領土奪還を目指すウクライナの反転攻勢を受けながら、プーチン政権は占領の既成事実化を着々と進めている。
ウクライナ大統領、占領地奪還へ決意 「大量殺害」とロシア糾弾
◇正当化に終始
「(4州併合は)数百万人の意思表明と、民族自決実現の結果だ」。プーチン氏は今月、毎年9月30日を記念日とする法案を自ら提出し、理由をこう説明した。併合の根拠とした昨年9月の「住民投票」も、今月の「地方選」も国際社会が認めない中、正当化に終始した。
法案は上下両院で可決され、併合1年の節目を前にした28日、プーチン氏の署名で成立。ウクライナのメディアは「占領記念日」の創設だと猛反発した。
記念日前の29日には、モスクワの「赤の広場」で「コンサート」と銘打った官製集会を開催。4州を「歴史的領土」と強弁し、ウクライナ侵攻を「北大西洋条約機構(NATO)からの祖国防衛」にすり替え、まだ支配できていない地域の制圧を進める考えとみられる。
戦争継続の準備は整っている。昨年9月、併合条約の調印前には予備役30万人の動員令を発出。併合と動員は密接に絡み合っており、4州を「祖国」と位置付け、その防衛という名目で招集に踏み切っている。
◇追加動員は封印
ただ、ロシア国民の大半が支持した2014年のウクライナ南部クリミア半島「併合」時と比べると、祝賀ムードには程遠い。4州の併合は西側諸国の追加制裁や予備役の動員という形で、国民生活に影を落としているためだ。
来年3月に見込まれる大統領選を前に、プーチン氏は「戦時大統領」として支持率のてこ入れを図っている。しかし、4州の発展に今後約2兆ルーブル(約3兆円)を投じると自ら公表したように、併合は国家財政に重くのし掛かる。戦争に終わりは見えず、仮に停戦に至っても占領が続く限り、日本を含む西側諸国の制裁も続くことになる。
ロシア軍は人的損耗が激しいとされるが、政権は追加動員を見送っている。プロパガンダが奏功し、自発的な志願兵が順調に集まったことが背景にある。
「志願兵が30万人になったと報告された。祖国のために犠牲もいとわない者の数だ」。プーチン氏は今月15日、こう誇らしげに披露するとともに、強制的な動員は当面ないというメッセージを暗に発した。大統領選を控え、国民の徴兵忌避や国外脱出が相次いだ1年前の事態は繰り返したくないようだ。