大の里、泰然自若 新十両で快進撃―大相撲
2023年09月29日04時42分
快進撃を続けても、「何も考えてない」と記録へのこだわりを見せなかった。新十両で迎えた大相撲秋場所で12勝を挙げた大の里(23)=本名中村泰輝、石川県出身、二所ノ関部屋=。初土俵から3場所目で、192センチ、176キロの恵まれた体格はひときわ存在感を放つ。押しても、組んでも、圧力十分の取り口は連日、見る者を引きつけた。
新十両対決となった朝紅龍との初日を皮切りに白星を重ねた。9日目には幕内経験者の千代丸を問題にせずに9連勝。1場所15日制が定着した1949年夏場所以降では、新十両としては初日からの最長記録に並ぶ史上3人目の快挙にも、「記録をつくりにきたわけではない」と、喜ぶ様子はみじんもなかった。
千秋楽で敗れ、十両優勝は逃した。「隙があった。反省点は改善して来場所、いい成績を残したい」。自身を冷静に見つめ直し、一喜一憂することがないところにも、大器の片りんが感じられる。
日体大では、2年連続でアマチュア横綱に輝いた。元横綱稀勢の里が師匠の二所ノ関部屋に所属。師匠は審判を務めており、土俵下で目を光らせる。「親方がいるか、いないかはすごく確認する」。場所中に直接、助言を受けることは少なくても、師匠の前で堂々たる相撲を披露。関取になっても時間の過ごし方は「入門した時と同じ」と言い、気負わずに、これまで通りに稽古を重ねた。
秋場所での収穫は、15日間の戦い方を学べたこと。日を追うごとに疲れは増したが、「それを消すくらいの集中力」でカバーした。「一日でも早く上に上がることが目標」と話す若武者が、心身ともに一回り大きな姿となって土俵を盛り上げる。