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ホームレスの自立支え20年 雑誌路上販売で収入に―ビッグイシュー日本版

2023年09月29日13時30分

インタビューに答える佐野章二さん=20日、堺市

インタビューに答える佐野章二さん=20日、堺市

  • ビッグイシューを販売する浜田進さん=21日、大阪市北区

 ホームレスが路上で自ら販売し、売り上げの約半分を手にできる支援雑誌「ビッグイシュー日本版」が9月で創刊20年を迎えた。発行する「ビッグイシュー日本」(大阪市)の共同代表を務める佐野章二さん(81)は「20年かけて『今すぐできる仕事』を提供できるようになったのが大きな成果だ」と振り返る。

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 1991年に英国で生まれたビッグイシューの日本版が誕生したのは2003年9月。98年以降、銀行や証券会社の倒産が相次ぎ、あちこちの公園がブルーシートのテントだらけになったのを見た佐野さんが、「ほっておいたらえらいことになる。こういう問題は早めに手を打たなければ」と感じたのがきっかけだ。
 佐野さんは、現編集長で共同代表の水越洋子さん(69)らと「日本で一番解決の難しい社会問題に取り組もう」と話し合い、それまで全く経験のなかったホームレス支援を決意。02年9月、水越さんが偶然ビッグイシューの存在を知り、英国に視察に向かった。周囲からは「100%失敗する」とまで言われたが、創設者の応援もあり、03年9月11日、創刊号の発行にこぎ着けた。
 リーマン・ショックやコロナ禍などさまざまな試練を乗り越え、定期購読や通信販売など新たな販路も開拓した。現在は定価450円で、1冊売れるごとに230円が販売者の収入になる仕組みだ。今年3月までに計969万冊を売り上げ、計15億5272万円が販売者の収入に。206人がホームレスを卒業した。現在は約100人が全国11都道府県で販売している。
 「ホームレスがいなくなれば販売する人もいなくなる。当初はビッグイシューがつぶれることがゴールだと言っていた」と佐野さんは笑う。「本当は10年でやめたかったが、まだやめるわけにいかない。路上生活の人だけでなく、氷河期世代やシングルマザーなどにも支援の範囲を広げていきたい」と語る。
 9月下旬、大阪・梅田の歩道橋で手書きの紹介文を掲げていた浜田進さん(72)はラジオでビッグイシューを知り、販売員になったという。「着眼点が面白い雑誌。生活のためもあるが、ビッグイシューを読むことで世の中が分かる。それを届けたい」と力を込めた。

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